● 事例 (1) 不当な解雇や強制的な帰国

● 事例 (1) 不当な解雇や強制的な帰国

 

○ 不当解雇。帰国強制を防いだ事例。

 

  愛知県で、農業で働いていた技能実習生Aさん(ベトナム人)。1年後に検定試験にも合格したが、在留期限直前に突然解雇通知を渡された。

 

⬅︎ 雇用企業は、Aさんを解雇したうえ、入管の手続き(在留期限)を利用して、すぐに帰そうとした。

 

  Aさんは実習の継続を希望し、監理団体(技能実習制度の仲介団体。事実上の派遣会社)に転籍先を探すよう求めたが、監理団体は帰国するよう促した。

  Aさんは外国人技能実習機構(OTIT)の母国語相談に連絡したが、OTITはAさんに帰国するようにアドバイスした。

 

⬅︎ 労働者の権利を守るはずの行政機関(OTIT)も、解雇を認めて帰国をすすめた。

 

  そこでAさんは、オンライン相談に連絡した。Aさんとオンライン相談の担当者はいっしょにOTIT名古屋事務所に行って、事情を訴えた。OTIT職員は訴えを理解して、監理団体に対して転籍先を探すように指導した。

 

⬅︎ 行政機関(OTIT)は、オンライン担当者が説明して、やっと事情を理解した。

 

  Aさんの在留資格がなくなる(在留期間が切れる)ので、つぎの仕事(実習先)を見つけるまでのあいだ「短期滞在」(90日間)で日本に残ることにした。監理団体が手伝って名古屋入管局で手続きをした(在留資格変更)。ところが名古屋入管局は、申請を受付けなかった。

 

⬅︎ ふたたび行政機関の理解が得られない。今度は入管。

 

  そこで、相談者に大阪に来てもらって、オンライン担当者と大阪入管局で在留資格の手続きをした。はじめは大阪入管局も受付けなかったが、Aさんが会社の不当解雇の被害者であり、今後、実習を継続できることを粘り強く訴えて、やっと申請が受付けられた。

 

⬅︎ 行政機関(入管)は、オンライン担当者が説明して、やっと事情を理解した。

 

  数週間後に「短期滞在」(90日間)在留が認められた。Aさんは、OTIT大阪事務所の支援を受けて新しい会社を見つけ、そこで技能実習を続けることができた。

 

⬅︎ 強制帰国を防ぎ、仕事は続けられた。しかし、不当解雇は問題にできなかった。

 

○  職場の暴力。「失踪」を防いだ事例。

 

  金属加工の技能実習生Bさん(ベトナム人)。職場で「実習指導員」の社員から、日々、頭を叩かれるなどの暴力を受けつづけ、耐え切れなくなって会社を逃げ出した。しかし、予定の技能実習にはまだ期間が残っていて、Bさんは実習を続けたかったので、オンライン相談に連絡した。

  オンライン担当者はBさんといっしょに外国人技能実習機構(OTIT)大阪事務所へ行って事情を説明した。OTITが支援して、新しい会社が見つかり、実習を続けることができた。

 

⬅︎ OTITの相談窓口には相談できない、という労働者も多い(理由は、電話通信を契約していない、会社を逃げ出したので行政に連絡するのが怖い、など)。また、相談しても、OTIT職員が労働者の問題を理解できないことも少なくない。

オンライン相談では、労働者が自分たちで問題を解決することを目指しているが、担当者が付き添うことも必要になる。

ただし、この事例では、もともとの問題である職場の暴力は解決できなかった。

 

○ 来日手続きの不正。強制帰国を防いだ事例。

 

  溶接で技能実習生として働くために来日したCさん(ベトナム人)。来日後の健康診断で仕事に影響する強度の弱視があることがわかり[説明を工夫したい]、雇用企業から就労を拒否された。監理団体(事実上の派遣会社)は、Cさんを帰国させるため、関西空港に連れて行った。

  Cさんが、関西空港の入管ブースで「私は強制帰国させられます」と訴えたところ、入管職員は搭乗手続きを中断して、「OTITに相談しなさい」とアドバイスをあたえて空港から外に出させた。Cさんは大阪市内の友人のところに身を寄せ、そこからオンライン相談に連絡した。

  オンライン担当者が駆けつけて、その日のホテル宿泊はオンライン相談が支出して、翌日、Cさんとオンライン担当者は、OTIT大阪事務所に行って、問題を訴えた。

 

⬅︎ 入管庁は、いったんは強制帰国を防いだが、Cさんを労働行政(OTIT)につなぐことはできなかった。オンライン相談は、行政間の「縦割り」を埋める役割を果たした。

 

  OTITが調査したところ、送り出し機関が「視力問題なし」という虚偽の健康診断結果を提出していたことがわかった。Cさんは自分の弱視を送り出し機関にも伝えていたので、送り出し機関のごまかしを知らなかった。協議の結果、送り出し機関と監理団体が、Cさんに手数料を返還することで合意して、合意書の締結後本人は帰国した。

 

⬅︎ OTITは調査から協議の仲介までを行った。

 

○ 解雇されたが、労働組合の協力で解決した事例。

 

  日本語ができない、仕事が遅いという理由でクビにされたり、仕事中のケガの治療に解雇を言い渡された外国人労働者(技能実習生)のケースがいくつかあった。いずれも労働者は労働組合に加入して、会社と団体交渉を行い、解雇を撤回させた。

 

⬅︎ 労働組合の団結の力で、難しい解雇の事件もスムースに解決することがある。