引く手あまた改良カマド、来年度はさらなる増設を目指す

写真: 新型改良カマドを設置する職人

 

テマ村を中心に設置を進めている新型改良カマドですが、今年度設置予定の20基は間もなくすべて設置が完了します。外見はこれまでのエンザロカマドと変わらないこの新型カマドですが、中の構造はまったく異なっており、火力が3カ所ある鍋掛口にまんべんなくまわるようになっています。とにかく好評で、設置依頼は引きも切りませんが、とても対応できません。

 

職人を増やせば設置能力もつくのですが、設計に忠実にどれだけ丁寧に組み上げるか、また各家庭で異なる鍋のサイズに合わせて、カマドの寸法をどう見積り、調整するか、職人の技量と資質がとても重要となってきます。なので1,2回技術研修をやれば、それで大丈夫ということにはなかなかなりません。いまは限られた職人に頼らざるを得ないので、どうしても設置できる数が限られてしまいます。

 

とはいうものの、数多く寄せられる設置要望に対して、何とか来年度は設置数を増やすことを考えています。できるだけご近所同士を選んで、同じ日に2基設置できないかと考えています。資材も各家に毎回運んでいたのでは、天候条件などにも影響されてしまうため、設置計画を立てたら一気にすべて配布するようにしたいと思っています。

 

写真: 新型改良カマドの人気は高まるばかり。需要に設置能力が追いつかない状況。

 

これが実現できれば、設置能力は年間50基までは増やせると見込んでいます。改良カマドの普及は、キリマンジャロ山の森を守っていくためには欠くことのできない取り組みです。森林保全というと、緑を増やす植林がイメージされますが、緑を減らさない取り組みを同時に進めていく必要があります。

 

苗木を植えて、その苗木が大きくなるには10年、20年という歳月が必要です。一方、生えている木を切り使ってしまうのは一瞬のことです。森林への圧力を減らすことの重要さは、そのことを考えただけでも良く理解できます。

 

改良カマドを導入することで、今の薪消費量を6割以上減らすことができます。キリマンジャロ山の森の近くに暮らす人々が、日々の煮炊きに使う薪を森に頼っていると考えると、その人口は25万人、6.5万世帯をくだりません。森に隣接する村は約80村ありますが、新型改良カマドを普及しているテマ村で、以前実施した森林からの木質資源持ち出し量調査の結果では、年間200t~325t(成木で約1,500本分)が森から持ち出されていました。たった1つの村でこの数字ですから、80村となるとたいへんな量になります。これを6割以上減らせることの森林保護に対する効果はとても大きいといえます。

 

タンザニア・ポレポレクラブはキリマンジャロ山の森を守っていくため、今後も植林と並んで改良カマドの設置・普及を重要な活動の柱の一つに据えて取り組んでいきます。