キリマンジャロ山で山麓住民が利用してきた里山の森“ハーフマイル・フォレスト・ストリップ(HMFS)”。その森が国立公園に取り込まれた結果、山に暮らすチャガ民族が築いてきた農耕システム“キハンバ”の地力維持が困難となっている状況を、以下の記事でお伝えしました。
タンザニア・ポレポレクラブは今後キハンバの地力を少しでも保っていくため、土壌養分を増やす樹種の苗木を配布していくことにしています。さらにキハンバでは、伝統水路が使えなくなったことから土壌養分だけでなく、水分の保持にも問題が出ています。当会はこの部分にもできる限り手を打っていきたいと考えています。具体的には、籾殻燻炭による土壌改良に取り組むものです。
籾殻燻炭には他の炭と同じように、微細な空隙が無数にあるため、そこに水分をため込んだり逆に不足時に放出したりする保水機能があります。また酸性化した土壌を中和し土壌生物や微生物の活性を高めるため、土の団粒化を促進するなど、土壌の化学・物理特性を改善する効果もあります。一方、籾殻自体には銅やマンガン、鉄、カリウムといった各種ミネラルが含まれており、燻炭可することでこれらが土壌中に溶出しやすくなり、作物が利用する助けとなります。
籾殻燻炭は導入にあたっても多くのメリットがあります。まず、キリマンジャロ山のお膝元モシの町の近郊には、JICAが支援した広大な水田が広がっており、原料となる籾殻の入手が容易なこと。そして燻炭を作る機材は非常に簡易なもので、ほとんどお金がかからず誰でも作れることです(下写真)。また普通の炭を土壌改良に使おうとすれば、炭を買うか木から炭を作るしかなく、どちらにしても森林伐採に繋がることになります。籾殻燻炭は稲作で発生する副次的な資源を有効利用するので、森林に負荷がかかるといった心配もありません。
写真:廃品利用レベルの簡単な資材で、籾殻燻炭を作ることができます
写真:廃品利用レベルの簡単な資材で、籾殻燻炭を作ることができます
当会はまず籾殻燻炭を使うことで、どの程度の効果(収量向上、環境耐性)があるかを確認することにしています。トウモロコシとコーヒーで試す予定ですが、現在村で試験用の畑を探しているところです。