トルコ:シリア難民への情報提供や電子マネーの配付―新型コロナウイルス緊急支援

 

配付された電子マネーで水やおむつなどの日用品を購入でき喜ぶシリア難民の方々(トルコ、2020年5月21日)

 

AAR Japan[難民を助ける会]は2012年から、トルコでシリア難民への支援を行っています。トルコでは、新型コロナウイルスの感染者数・死者数ともに減少傾向にあるものの、感染者数は17万人を超え中東で最多となっており、深刻な影響が出ています(2020年6月10日時点)。

 

トルコ国内で新型コロナウイルスの影響が広がる中、シリア難民の方々は言葉の壁による情報不足から大きな不安を抱え、また経済的にもひっ迫した状況に直面しています。新型コロナウイルスの影響により仕事を失うと、食料や生活必需品を購入できなくなったり、家賃を滞納して退去をせまられたりします。難民として暮らしていることへの不安に、感染への不安、今の生活が損なわれる不安も重なって、メンタルヘルスの悪化も懸念されています。これまでストレスの軽減となっていた親戚や友人との会話も、感染防止のために難しくなっています。そこでAARは新型コロナウイルスに関する情報提供や電子マネーの配付などの支援を行っています。

 

「こういうサイトを待っていた」アラビア語版ウェブサイトを開設】

トルコ語で書かれた情報はアラビア語を使用するシリア難民には読むことが難しく、トルコ国民以上に、得られる情報が限られているシリア難民の方々は大きな不安を抱いています。AARは新型コロナウイルス緊急支援として、これまでも電話やWhatsApp(ラインのような無料通信アプリ)を使って難民の方々への情報提供を行ってきましたが、4月9日に新型コロナウイルスに関する情報を発信するウェブサイトを公開しました(https://www.aarturkey.org/)。政府から発表された最新情報や正しい手洗い方法など、感染予防に関する情報がアラビア語で記載されています。また、子ども向けの正しい手洗い方法についてなどの動画を見ることもできます。スマートフォンからも操作しやすいように作られています。開設してから6月2日までに3,052件のアクセスがあり、利用者からは「最新の情報やトルコ政府の決定などについて、アラビア語で知ることができてありがたい」「(感染予防等についての)正確な知識を得ることができ、やむを得ず外出する時にでも安心感が高まった」との声が届いています。

 

シリア難民の不安を少しでも和らげようと、AARが立ち上げたアラビア語のウェブサイト

 

 

【電子マネーの配付】

 

また、AARがこれまで支援をしてきた367の世帯・人々を対象に、650トルコリラ(=約10,000円)分の電子マネーの配付を行いました。この電子マネーは、全国チェーンのスーパーマーケットで利用することができ、カード番号とパスワードをレジで伝えることで、食料品や日用品を購入することができます。

 

電子マネーを配付する家庭にAARスタッフが一軒ずつ電話をかけ、使用方法や注意点などを説明します(トルコ、2020年5月21日)

 

新型コロナウイルスの影響で日雇い労働などの仕事がなくなり、それに伴って収入が減っていた方々にとっては大きな支えとなっています。電子マネーを受け取った方からは、「収入が途絶え、生活に困っていたタイミングでの支援は非常に助かった」「本当に今回の支援はありがたかったので、携わってくれた方々全てにお礼を申し上げたい」との声が届いています。また、感染防止のため活動に制限のあったスタッフも、難民の方々の日々の生活に役立つ活動ができて嬉しく思う、と話しています。

障がい者向け補助具の提供や心理カウンセリングの実施など、一人ひとりの状況に応じて行ってきた個別支援においても、オンラインで実施できるものは電話やWhatsAppなどを活用して継続して行っています。電子マネーのニーズが大きいため、今後も支援対象を増やして合計で3,000世帯に配付を実施する予定です。子どもや保護者向けのオンラインでの心理社会的サポートの活動も、6月中旬から開始する予定です。

新型コロナウイルスがシリア難民の方々の生活に与えた影響は大きく、支援もまだまだ必要とされています。今後も人々の状況に即した支援を届けていきます。