ミャンマー:障がい児の家庭へ食糧配付を開始 -新型コロナウイルス緊急支援

【経済的に追い込まれた家庭へ、食糧を届ける】

米10kg、油1ℓ、卵30個、ひよこ豆1.6㎏、ジャガイモ1.6kgを1セットにして配付しました。AARミャンマー事務所の現地スタッフが、マスクの着用など感染拡大の防止・予防策を取った上で実施しました(ミャンマー・ヤンゴン、2020年5月8日)

 

新型コロナウイルスの感染が広がるミャンマーでは、これまでに228名が感染し、6名が亡くなっています(2020年6月1日時点)。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、以前からAARが支援していた方々の暮らしは、さらにひっ迫してきています。今回、従来から支援している障がい児の家庭の中でも特に経済的に困窮したり、政府からの支援の対象外となった家庭から、支援物資を届けました。AARミャンマー駐在員の大城洋作が報告します。

 

AARが支援する家庭の多くは、工事現場での日雇い労働や、小規模の家業などで生計を立てています。しかし、政府による新型コロナウイルス対策としての営業停止や外出・移動制限などの影響で、仕事を失ったり、収入が減少し、日々の食事にさえ事欠く家庭が出てきました。
そこで、AARは5月8日と9日に、最初の緊急糧配付を行い、15世帯へ、お米やひよこ豆、卵などの食糧パッケージを届けました。

 

【仕事を失い、借金をしながらの生活へ】

AAR現地スタッフ、ミン・ミン・エー(左)から、食糧を受け取るテイン・テイン・ピョーちゃん(9歳)(写真中央)と母親(右)(ミャンマー・ヤンゴン、2020年5月8日)

 

テイン・テイン・ピョーちゃんの家族は、プラスチックや鉄くず、紙などの再生資源を集めて、廃品回収業者へ販売する仕事をしていました。しかし、3月にミャンマー政府が国境を閉鎖したため、海外への廃品輸出ができなくなり、業者も買い取りを停止してしまいました。テイン・テイン・ピョーちゃんの家族は、ほかに買い取ってもらえるものを必死に探しましたが、さまざまな廃品の買い取り価格が軒並み下がっているため、採算が合いません。

今はわずかな蓄えを切り崩したり、周りから借金をしながら何とか生活しています。しかし、これ以上収入が無い状態が続くと、借金の返済もままならない状況です。

テイン・テイン・ピョーちゃんは6人家族で、今回届けた食糧で、2週間以上の食事を賄うことができますお母さんからは、「この大変なときに支援いただき、とてもありがたいです。これで食費をほかの生活費に充てることができます」と、感謝の声をいただきました。

 

【先が見えない中で届いた食糧】

笑顔を見せてくれたアウン・ザヤー・ピョー君(11歳)。手前の黄緑色の袋は、配付したお米(ミャンマー・ヤンゴン、2020年5月8日)

 

アウン・ザヤー・ピョー君は6人家族で、一家の家計は魚市場で働くお父さんが支えています。月収は日本円にして約1万円で、半分が家賃、残りの半分が生活費と、生活は厳しいものでした。そんな中、政府の政策で市場が閉鎖され、お父さんが働いていた会社は休業を余儀なくされました。休業期間の給料は支払われないため、お父さんは家族を何とか養うために、自転車タクシーの運転手を始めました。しかし収入は微々たるもので、とても家計を支えることができません。

貯蓄が無いため、魚市場での仕事が再開できるまで家賃の支払いを待ってもらえないか大家に相談し、猶予してもらえることになりました。けれども、いつ市場が再開するかわからないため、家族の不安は絶えません

先が見えない中での支援に、家族はとても喜んでくれました。AAR現地スタッフのティン・ザー・ラインからは「この大変な時期に支援を行うことでとで、子どもたちやその家族と、今まで以上に深いきずなを築けました」との報告が届きました。

 

【辛い状況でも、家族が見せてくれた笑顔】

ピョー・パパ・アウンちゃん(2歳)(写真中央)と、両親。左端はAAR現地スタッフのカラヤー・キン・マウン・エイミャンマー・ヤンゴン、2020年5月8日)

 

ピョー・パパ・アウンちゃんは両親との3人家族です。お父さんはホテルで働き、暮らしは比較的安定していましたが、観光客が減少したことでホテルの経営が悪化し、先日解雇されてしまいました。

家族を養うために、お父さんは新たな仕事を探し始めましたが、自宅がある地域で、新型コロナウイルスの感染者が多く見つかりました。その結果、面接先の企業から感染を疑われ、採用条件を満たしているにも関わらず、就職できませんでした。今もお父さんは仕事を探し続けていますが、新型コロナウイルスの感染拡大加え、経済も悪化しているため、新たな就職先を見つけるのに苦労しています。

辛い状況の中、AARが食糧を届けると、それでも家族は明るい笑顔を見せてくれました。提供した食糧で3週間過ごすことができます。お父さんは、「今後、食糧配付で人手が必要であればいつでも言ってください。お手伝いさせてもらいます。」と言ってくれました。

 

【引き続き求められる緊急支援】

AARはもともと、AARスタッフが障がい児の家庭を月に2回ほど訪問し、リハビリや教育機会の提供、障がい児や家族の悩み相談などを行っていました。しかし、4月からは感染予防・拡大防止のためにやむを得ず訪問を中止していました。今回、食糧を届けた際、約1ヵ月ぶりに子どもたちに会い、健康状態や家庭の環境を確認することができました。

今後も食糧の緊急配付を計画しており、引き続き調査を進めながら支援を行っていきます。皆さまのご協力を、どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

報告者:ミャンマー事務所 大城 洋作

民間企業で勤務後、世界一周の旅へ。帰国後2014年4月にAARに入職し、2015年2月より約3年間、ラオス駐在員として障がい者支援に携わる。2018年4月よりミャンマーに駐在。「新たな人生を切り拓こうと励む障がい者の方々の姿に、元気をもらっています」。沖縄県出身