キリマンジャロ山の森林火災から1カ月半

 

 

10月11日にキリマンジャロ山の登山ルート・マラングルート上で大規模な森林火災(写真)が発生して1カ月半。炎は推定95.5平方キロメートルといわれる植生を焼いて鎮火しました。

 

以下の当会フェイスブック記事でも触れたように、森林火災自体は昔からキリマンジャロ山で発生していました。

 

・フェイスブック「キリマンジャロ山で大規模な火災発生」 → こちら

 

しかし減り続ける降雨と乾燥化のため、発生する火災の頻度は増える傾向にあります。さらに今回の火災は規模も大きく、キリマンジャロ山にある植生の約6~7%ほどが失われたと考えています(以下の記事でタンザニア国立公園公社は山の総面積の5%としていますが、これは国立公園面積の間違いでしょう)

 

・現地紙Citizen(10/17付)記事

 “Kilimanjaro fire has destroyed 95.5 square KM of vegetation” → こちら

 

東京ドーム2千個分以上が燃えてしまったことになり、当会が山麓住民と取り組んでいる植林でこれをカバーしようとすれば100年以上かかってしまいます。世界遺産でもあるキリマンジャロ山での深刻な森林火災にユネスコも懸念を表明しています。

 

今回の火災を受けて、さっそくキリマンジャロ山の火災とそれが森林に及ぼしてきた影響に関するレポートなども出されています。

 

・“Fires shaped Mount Kilimanjaro’s unique environment. Now they threaten it” → こちら

 

このレポートは、キリマンジャロ山の植生を長く研究している著名な植物分類学者が今回の火災後に発表したものですが、キリマンジャロ山では人為及び火災によって、この1世紀ほどの間に50%の森林が失われたと指摘しています。

 

このような森林減少に立ち向かい、キリマンジャロ山の貴重な自然生態系を守っていく取り組みは欠かせません。しかしその方策としてこのレポートで述べられている国立公園公社による森林帯の一元的管理、国立公園の山麓低地へのさらなる拡大には異論のあるところです。

 

キリマンジャロ山にはそこに長く住み暮らしてきた人々がいることを忘れてはならないでしょう。人の視点を欠いた自然保護論は今のキリマンジャロ山が実際にそうであるように、極めていびつな結果しかもたらしません。

 

今回の火災を契機にまたぞろ人間排除による自然保護論が持ち上がることを懸念しています。