内戦が終結の兆しを見せるシリア。しかし、人道上の課題は山積みで、特に地雷や不発弾の問題は深刻です。AAR Japanのパートナー団体であり、同国北西部で地雷除去活動を展開している国際NGO「ヘイロー・トラスト」の職員は「こんなことは見たことがない。何万人もの人々が毎日、地雷の多い地域を通過し、不必要な死亡事故が起きている」と話します。
内戦突入後、シリアでの地雷や不発弾による被害は、地雷禁止国際キャンペーン(International Campaign to Ban Landmines)による報告書(Landmine Monitor Report)では、死傷者数が2011年ごろから増え始め、2017年は1,906人と爆発的に増加しました。2020年には2,729人という数となりました。これは同年の世界の地雷や不発弾による死傷者数の約4割にあたります。2020年から3年間、シリアは世界で最も死傷者が多い国でした。
被害が特に多いのが、内戦下で反政府勢力の影響下にあり戦闘の激しかったアレッポ県、イドリブ県、ハマ県、ホムス県、ラタキア県など北西部。首都ダマスカスとダラー県、クネイトラ県といった南部の政府支配地域でも多く、イラクと国境を接している東部地域のデリゾール県やハサカ県、トルコと国境を接するラッカ県でも相当の被害が出ています。被害者が出ていない地域は、住民がほとんどいない砂漠ぐらいです。
シリア難民の安全な帰還のためには、治安が確保された場所から優先順位をつけて地雷の調査や除去を行う必要があります。しかし、地雷除去に関わる人手不足は深刻です。
AARは、国際NGO「ヘイロー・トラスト」や現地団体とともに国内避難民と帰還民への支援を進めています。シリア緊急支援へのご協力をよろしくお願い申し上げます。