被災地を走る「お風呂カー」入浴支援:能登半島地震

能登半島地震の発生から4カ月半、石川県内の被災地では道路の復旧や仮設住宅の建設が進む一方、今も多くの倒壊家屋が放置され、上下水道が使えないままの地域もあります。AAR Japan[難民を助ける会]は2月以降、「お風呂カー」巡回による入浴支援を続けています。

 

石川県能登町羽根地区の海岸沿いで入浴準備をするお風呂カー=石川県能登町羽根地区で2024年4月20日

 

「ここにお風呂カーが来る時は、毎回入りに来ています。娘は障がいがあるので、自衛隊のお風呂は、人が多くて嫌がります。普段は鍋でお湯を沸かし、浴槽に溜めて入浴しているので大変です。このお風呂はゆっくり入れるので本当に助かります」

 

石川県能登町羽根地区の海岸に停車したお風呂カー。毎週土曜日の午前10時に運営を開始すると、住民の方が順番に入浴に来ます。娘さんと二人で入浴に来た高齢の女性は、嬉しそうに話してくれました。

 

トラックを改造したお風呂カーの内部。濾過装置も備えてお湯をきれいに保つことができる

 

近くに住む中学生の坂本逞斗さん(13歳)は、「毎回入りに来ています。普段は車で15分ほど離れた場所の自衛隊のお風呂に行ってますが、遠いし待ち時間も長くてちょっと不便です。お風呂カーはひとりでゆっくり入れるので嬉しいです」。震災後は一時、金沢市に集団避難していましたが、今春の新学期は自宅から元の中学に通っています。「自宅は家具が倒れたくらいで幸い無事でしたが、やっぱり4カ月経っても水道が使えないことが一番大変です」と話します。

 

AARのお風呂カーで入浴を済ませた坂本逞斗さんに話を聞くAAR東京事務局の長井美帆子

 

4月末時点で43人が避難している能登町立松波中学校の避難所からは、「自衛隊のお風呂が撤収するので入浴支援に来てほしい」との要請がありました。同校の駐車場に設置されていた自衛隊のお風呂は、ここに仮設住宅が建設されるため他の避難所に移動しました。自家用車など移動手段のない方、介助が必要な方もおられ、週2回巡回するAARのお風呂カーは「使いやすくて助かっている」と好評です。

 

介助ボランティアの手を借りてお風呂カーを利用する高齢女性(右)=能登町立松波中学校

 

多くの地域で続いていた断水状態は徐々に解消され、上下水道は現在ほとんどの自治体で復旧しています。しかし、個人宅の敷地内に引かれた水道管は各世帯で修理する必要があるため、すべての家で水道が使えているわけではありません。「早く修理したいが、業者に依頼しても数百人待ちの状態です」との声も聞かれます。自宅の再建や仮設住宅への入居の目途が立っていない被災者も少なくありません。

 

AARは被災者の皆さんのニーズを把握しながら入浴支援を続けてまいります。AARの能登半島地震被災者支援へのご協力をよろしくお願い申し上げます。

 

倒壊した家屋の横で遊ぶ子どもたち=輪島市町野町で2024年4月20日

 

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