障がい者支援を開始:ウクライナ国内支援

ロシアによるウクライナ軍事侵攻から4カ月以上が経ち、ウクライナ国内に留まっている障がい者の状況が懸念されています。AAR Japan[難民を助ける会]は、ウクライナ国内の障がい者団体「ジェレラ(Djerela)」を通じて、特にきめ細かな支援が必要とされる障がいのある方々への支援を開始しました。AAR東京事務局の紺野誠二が報告します。

(写真)知的障がい者の親の会「ジェレラ」の皆さん

 

ウクライナでは、3万人以上の知的障がい者の方が施設で生活していますが、こうした施設の多くが軍事侵攻の影響で活動できなくなりました。予算が急に削られたり、安全確保のため活動を禁止されたりしたためです。さらに鳴り響く砲撃音や空襲警報、そして避難生活は知的障がい者が混乱する要因となり、その家族も含めて大変な疲労につながります。

 

知的障がい者の親の会ジェレラ(1996年設立)は、首都キーウ(キエフ)とその近郊で、障がい者のリハビリテーションや就労支援、デイケアなどの活動を行ってきました。現在は180の家族を支援しています。

 

今回、ジェレラからの要請を受け、知的障がい者本人と家族を対象にしたレスパイト・ケアの実施を決定しました。レスパイトは英語で小休止を意味し、障がい者や療養者などの「介助される側」と、家族など「介助する側」が一時的に離れて過ごすものです。双方のストレスを解消し、問題行動や暴力などのリスクを軽減するとされています。

 

具体的には、22-45歳の知的障がい者24人が、キーウの南に位置するボグスラヴ(Boquslav)にある障がい者のための一時滞在施設を訪れます。静かで安全な環境で散歩などを楽しみ、リフレッシュしてもらいます。24人は8人が一組となり、それぞれ10日間滞在します。AARは、滞在や食事、付き添いやカウンセリングなどにかかる費用を支援します。

 

(写真)ジェレラ代表のクラフチェンコさんと息子さん

 

ジェレラの代表で、ご子息に知的障がいがあるライサ・クラフチェンコさんは「ロシアによる軍事侵攻で、キーウにはロケット攻撃があり、ブチャなどにはロシア軍が入ってきました。空襲警報のサイレンの意味や、なぜ地下シェルターに避難するのかを理解できない知的障がい者もいます。ブチャ周辺に埋められている地雷のリスクも理解できないまま、不安とストレスにさらされています。それを支える家族も疲れきっています」と現状を語ります。

 

また、ジェレラ職員のオルハさんは「知的障がい者や自閉症などの人たちにとって現状は極めて厳しく、感情表現が激しくなっています。家族もバーンアウトしそうな状況です。障がい者本人にも、家族にとっても、今回のレスパイト・ケアの支援は非常に意味のあることだと思います」と力を込めて話してくれました。

 

AARは障がい者ご本人とご家族の置かれた厳しい状況を少しでも改善するために、活動を続けていきます。どうか今後ともご支援をお願いいたします。

ご支援はこちらから↓

https://giveone.net/supporter/project_display.html?project_id=20366

 

 

*日本外務省の海外安全情報(7月末現在)では、ウクライナは「レベル4:退避勧告」に該当しますが、AAR Japanは独自に情報収集を行い、同国中西部地域については、安全を確保して短期間入域することは可能と判断しました。AARは今後も万全の安全対策を講じながら、ウクライナ人道危機に対応してまいります。