「一日も早く戦争が終わってほしい」:ウクライナ難民の女性たち

ロシアの軍事侵攻によるウクライナ人道危機の発生から2カ月余り、南隣のモルドバでは約10万人の難民が避難生活を続けています。ウクライナでは祖国防衛のために成人男性(18~60歳)の出国が原則禁じられ、難民の実に9割が女性と子どもです。AAR Japan[難民を助ける会]が食事や食材を提供するモルドバの首都キシナウの公共保養所で、難民の女性たちに今の思いを聞きました。AAR支援事業部の藤原早織が報告します。

 

イリーナさん

 

写真はいずれも小峯弘四郎撮影=2022年4月30日

 

「ウクライナ南部のクリミア半島近くの都市ムィコラーイウ(ミコライフ)から娘2人、14歳、8歳、4歳の孫たちと一緒に3月上旬に避難して来ました。夫と息子はウクライナ軍に加わってロシア軍と戦っています。毎日食事の度にテキストメッセージを送って安否を確認しますが、返信を待つ間は本当に生きた心地がしませんよ。

 

ここでは皆が大きな家族のように支え合って過ごしています。外国の支援で子どもたちの遊び場や勉強部屋がありますが、孫は画用紙に向かうと戦争の光景ばかり描くので心配です。今は一日も早く戦争が終わって帰ることを願っています。私たちが住んでいた地区は水道が破壊されましたが、家族に会えれば、そんなことは問題ではありません。」

 

ヤニナさん

 

 

「ムィコラーイウへの攻撃が始まった後、3月中は家の地下シェルターに隠れ、服やダウンジャケットを重ね着して寒さに耐えました。21歳、12歳、5歳の息子がいるのですが、子どもたちのことを考えるとずっと残るわけにもいかず、支援者のバスに乗って4月上旬にモルドバに来ました。障がいがある長男は一緒に避難しています。

 

夫は私たちが安全な場所にいるので安心しているようです。ムィコラーイウでは毎日爆撃があり、攻撃の合間に食料の買い出しに行っていました。保養所は平穏に過ごしていますが、爆撃に怯えていた5歳のマキシムは、ここでも救急車などの大きな音を聞くたびに身体を強張らせます。子どもたちも大きなストレスを感じているのだと思います。」

 

ナタリアさん

 

 

「先に避難した友人からこの保養所のことを聞いて、7歳の娘と母の3人で4月下旬、ウクライナ南部のオデーサから半日歩いて国境を越え、モルドバ入国後はバスでキシナウまで来ました。最近までオデーサを離れずにいましたが、激しい攻撃が毎日続いており、娘の安全を第一に考えると、いつまでも残ることはできませんでした。

 

ここでは毎日3食、温かい食事を出してもらって、とてもありがたいですね。モルドバの人たちは本当に優しいし、穏やかで物事に動じない雰囲気を感じます。私たちウクライナ人は何か起きるともっと大騒ぎになって、こんなふうには対応できないんじゃないかと思います。日本の皆さんをはじめ世界中の方々に支援してもらって感謝しています。」

 

ウクライナ難民の女性たちに話を聞くAAR緊急支援チームの藤原早織(右から2番目)

 

女性たちは「ウクライナ軍は本当に頑張っている。いつか母国に帰れる日が来るだろう」と異口同音に訴えつつ、残してきた家族の身の安全を何より案じていました。AARは難民となった女性や子どもたちが少しでも安心して過ごし、祖国に帰る日を迎えられるように、人々に寄り添う支援を続けてまいります。AARのウクライナ難民・国内避難民支援へのご協力を重ねてお願い申し上げます。

 

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報告:藤原早織(東京事務局)

大学卒業後、ITベンチャー企業での勤務後、2020年にAAR入職。ラオス事務所駐在を経てミャンマー事業やウクライナ緊急支援を担当。