佐賀の被災地 2カ月経て続く困難:令和3年8月豪雨

佐賀県を中心に甚大な被害をもたらした8月中旬~下旬の令和3年8月豪雨から2カ月余り、被災地では今も浸水した自宅の2階で在宅避難を続ける被災者が少なくありません。AAR Japan[難民を助ける会]は発生直後に緊急支援活動を開始し、現在は在宅避難者に炊き出し弁当をお届けしながら困りごとの相談に応じる「アウトリーチ型」支援、地域の障がい福祉施設や障がい者宅への物資提供などの支援を継続しています。

 

炊き出しのお弁当を届けるAARの大原真一郎(武雄市北方町久津具地区)

 

今夏の佐賀豪雨では、新型コロナウイルス感染拡大の影響で多くの被災者が避難所に行かずに、浸水した自宅の2階で避難生活を続けているのが特徴です。1階にある台所が使えなくなったうえ、畳や床板を撤去したまま、不自由な生活を余儀なくされています。

 

AARは全64戸のうち47戸が床上浸水した武雄市久津具地区で、宅幼老所「笑びす」を運営するNPO法人みつわ(荒川千代美代表)を拠点に炊き出しを続けており、10月15日までに1,843食の弁当をお届けしました。炊き出しはNPO法人ピースプロジェクト(加藤勉代表)、同地区自治会と協働し、グリーンコープさが、民間ボランティアセンター「おもやい」の協力で実施しています。

 

炊き込みご飯を盛り付けるAAR理事の加藤勉(NPO法人ピースプロジェクト代表)

 

久津具地区で在宅避難を続ける方は「水道・電気は復旧したものの、1階は今も床板がない状態なので、そこで食事を作る気にはなれません。2カ月経っても家の片付け、罹災証明の手続きなどやることが山積みで、お弁当が届く日は本当に助かっていますよ」。

 

弁当をお届けするだけでなく、戸別訪問する中で困りごとをお聴きしたり、支援が届かずに孤立した障がい者宅がないか情報収集したりするのも、アウトリーチ型支援の大切な役割です。聞き取り調査を踏まえて、AARはひとり暮らしの高齢者宅や障がい者世帯(武雄市、大町町、久留米市の7世帯)に生活備品を提供しています。久留米市内の障がい者のひとり親世帯の父親は「アパート1階の自宅が床上浸水し、生活用品がほとんど使えなくなって途方に暮れていました。日々生活するのがやっとだったので、こうして支援してもらって本当にありがたい」と話してくれました。

 

このほか、AARは地域の障がい者の皆さんが働く共同作業所4カ所に事務機器や農業資機材、体調管理に必要な健康器具などを提供し、福祉施設の復旧・再開をサポートしています。NPO法人エガリテが運営する大町町の共同作業所「きばごん」は、浸水した事業所の修繕工事が終わって今月中旬に運営を再開し、職員の方から「被災後は絶望を感じていましたが、AARの支援で希望の光が灯り、利用者さんや職員に笑顔が戻ってきました」との言葉をいただきました。AARは災害時、最も困難な立場に置かれる障がい者や高齢者の方々を中心に支援活動に取り組んでいます。佐賀の被災地ではまだまだ困難な状況が続いています。引き続き、皆さまの温かいご理解・ご協力をよろしくお願い申し上げます。

 

▼これまでの活動・ご協力はこちらから https://giveone.net/supporter/project_display.html?project_id=20211