佐賀の被災地で炊き出し開始:令和3年8月豪雨

記録的な大雨に見舞われた佐賀県内では、佐賀市、武雄市などで床上・床下浸水が2700件超(8月20日現在)確認され、土砂崩れの危険を避けて避難を続ける住民もいます。被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。AAR Japan[難民を助ける会]は20日夕、甚大な被害を受けた武雄市内で、高齢者など在宅避難者を対象に炊き出しを開始しました。

 

「こがんぬっか(温かい)弁当ばもろうて、ありがたかねえ」。

 

武雄市北方町の農村地帯にある久津具地区。集落に乗り入れた真っ赤なキッチンカーで、プロの調理師たちが夕食用の弁当約200個を作り、在宅避難を続ける被災者に届けました。この日のメニューは焼魚(サバ、シャケ)、切り干し大根の煮物、サラダなど。新型コロナウイルス感染防止のため、通常の炊き出しのように住民の皆さんが一カ所に集まることはせず、5つある班の代表が取りに来て戸別配付しました。

 

(キッチンカーで炊き出しの調理をする九州ケータリング協会の中島一さん(中央)たち =佐賀県武雄市北方町で8月20日午後)

 

(サバの塩焼きをメインにした夕食の弁当(8月20日))

 

弁当を受け取った79歳と78歳のご夫婦は「自宅が床上浸水して、消防団のボートで2階から救助されました。家の中を片付けましたが、1階は湿ったままなので2階で暮らしています。台所が使えなくなり、近所の商店も開いていないので、差し入れなどで何とか食いつないでいます」と話します。

 

(弁当を受け取ったご夫婦は「ありがたかねえ」と笑顔に)

 

佐賀県中部を流れる六角川と支流・川添川の合流地点にある久津具地区は、以前から水害が繰り返し発生していましたが、今年8月13~15日頃の浸水は、過去最大の被害となった2019年8月の佐賀豪雨の時よりも20~30センチ水位が高く、全64戸のうち47戸が床上浸水しました。前回の豪雨で農業機械が水没したのを機に農業を辞めたというご夫婦は、「お弁当ば届けてもろうて、うれしかねえ」とホッとした表情を見せてくれました。

男性が電柱で自身の背よりも高いところを指している

(2年前の浸水水位のマークを指差し、「今回はこれより高かった」と話す 相川一美・久津具地区)

 

同地区で宅幼老所「笑びす」を運営するNPO法人みつわの荒川千代美代表は、「うちも行政から届いたアンパンやレトルト食品くらいしかなく、皆さん食事に困っていたので、こうして炊き出ししてもらって本当に助かります」と話します。

(弁当に添えられた荒川千代美さん手作りのチラシ)

 

今回の炊き出しは、佐賀市に本部を置く一般社団法人九州ケータリング協会(中島一代表理事)の協力で実現したものです。現在35社が加盟する同協会は「機動性を生かし、食を中心に広く一般社会に対して支援活動を行うこと」を理念のひとつに掲げており、「食事を満足にとれない被災者のお年寄りがいる」との情報を得たAARが炊き出しを打診したところ、快く引き受けてくださいました。

 

中島さんは「災害直後はカップラーメンでも仕方ないけれど、数日経ってもそんな状態では健康に良くありません。こういう時こそ、日頃からイベントなどを通じて地元と関係を築いている我々がお役に立たなければと思います」と話し、週をまたいで5日間、夕食の炊き出しをする予定です。

 

AARは17日以降、武雄市内の障がい福祉施設に衛生用品や飲料品、清掃用の高圧洗浄機や大型扇風機などを提供したほか、浸水で使えなくなった家具・備品を新たに購入するための資金調達を進めています。皆さまの温かいご支援をよろしくお願い申し上げます。