ウクライナ人道危機の陰で~難民の日(6/20)に寄せて

ロシアのウクライナ軍事侵攻が始まって3カ月余り、周辺国に逃れた難民と国内避難民の合計は約1,500万人に上り、第二次世界大戦以降で最大の人道危機が続いています。この事態を受けて、世界の難民・国内避難民は1億人を超え、世界人口(約80億人)の1%超の人々が住んでいた町や家を追われて避難を余儀なくされているのが現状です。 AAR Japan[難民を助ける会]はウクライナ侵攻が始まって間もない3月、隣国ポーランド、モルドバにいち早く職員を派遣し、ウクライナ西部に留まる国内避難民、モルドバに滞在する難民への緊急支援活動を開始しました。

 

ポーランドに逃れたウクライナ難民

 

事態の長期化が懸念される中、当初の食料・医薬品、日用品などの物資提供に加えて、ウクライナ難民の9割を占める女性と子ども、とりわけ子どもたちの教育支援や遊び場の提供、障がい者支援に着手するとともに、停戦後の復興と難民の帰還を見据えた息の長い取り組みを計画しています。

 

忘れられる難民問題

 

日本を含む国際社会の関心がウクライナに集中する一方で、11年余り続く泥沼の紛争を逃れたシリア難民、ミャンマーで武力弾圧を受けて隣国バングラデシュに100万人超が滞留するロヒンギャ難民、アフリカ東部ウガンダに流入した南スーダンやコンゴ民主共和国などの難民は、半ば忘れ去られようとしています。

 

また、昨年トップニュースとして報じられたミャンマーの軍事クーデター(2月)、アフガニスタンのタリバン復権(8月)と政情不安に対する関心は急速に薄れ、国内避難民や貧困世帯など弱い立場に置かれた人々はますます困窮し、孤立しています。AARは現地事務所を通じて食料や衛生用品などの配付を続けていますが、治安の問題もあって支援活動は困難を極めます。

 

ミャンマーの障がい者支援のワークショップ

 

支援物資の配付を待つアフガニスタンの人々

 

バングラデシュのキャンプで暮らすロヒンギャ難民

 

ウガンダ・チャングワリ難民居住地の学校で授業を受ける難民の子どもたち

 

新型コロナウイルス禍が2020年以降、世界を暗く覆う中で非常事態が次々と発生し、深刻な人道危機が各地で同時進行しています。それら個々の問題は何ひとつ解決に向かっていません。21世紀の第一四半期は、国際秩序が大きく揺らいだ世界の混乱期として記憶されるかもしれません。残念ながら、私たちはそういう時代に生きているのです。

 

ウクライナにせよ他の問題にせよ、私たちAARが取り組む人道支援活動は、大規模かつ惨たんたる状況にあって、まさに「大海の一滴」に過ぎません。できることは本当に限られています。しかし、こうした事態に心を寄せる日本の多くの方々の気持ちを、確かな「支援のカタチ」に変えて、現地に届けることはできます。そして何より、その一滴を待つ人々がいます。

 

6月20日は「世界難民の日」。今年はウクライナ危機をきっかけに、難民問題への関心が例年以上に高まっています。追い詰められた人々に救いの手を差し伸べられるのは、同じ時代に生きる私たちしかいません。いま何が起きているかを知ること、それを周囲の人たちとシェアすること、自分がいる場所で無理なくできる何かを見付けること――。その小さな一歩を踏み出すことで、何かが変わるはずです。

 

きっと、できることはあります。

 

【AARのアフガニスタン支援へのご寄付はこちらから】