岐路に立たされる裁縫教室

職業訓練校の制度改変を報じる現地紙“The Citizen”(Web版)

職業訓練校の制度改変を報じる現地紙“The Citizen”(Web版)

 

現地カウンターパートTEACA(Tanzania Environmental Actoion Association)がキリマンジャロ山のテマ村で運営している裁縫教室が、存亡の危機に立たされています。

 

これまでもお伝えしてきたように、コロナ禍や天候不順による収穫の減少等により、多くの在学生の家庭では家計が打撃を受け、学費を払うことが難しくなっています。一方で最近の急激な物価上昇により、学費は上げざるを得ないというまったく相反する状況が生まれています。さらに政府が国家試験不合格者の再履修を強力に推し進めたことから、これまでそうした生徒たちの受け皿となってきた職業訓練校は、一気に生徒の確保が困難となってしまいました。

 

当会とTEACAは何とか生徒たちが学費を払えるように、教会の支援プログラムとの連携を模索していました。ところが政府が職業訓練に関わる制度の改変を行うことになり、その連携にさえ暗雲が垂れ込めつつあります。

 

制度改変では、これまで独立した政府の職業訓練機関であったVETA(Vocational Education and Training Authority、TEACA裁縫教室はその認定校)を、国家職業教育評議会(NACTE:National Council for Technical Education)に組み込み、さらにこれによりNACTE自体も改組し、国家職業教育訓練評議会 NACTVET(National Council for Technical and Vocational Education and Training)にするというものです。

 

大雑把に言うと様々なカテゴリーの政府の職業教育・技術専門校を一つの組織の下に統合、プログラムや評価方法を統一し、これにより教育品質の均質化と向上を目指すというものです。

 

教育の質の向上を目指すことは悪いことではありません。しかしそのために地域で村人や子どもたちの自立などを助けてきた教会や草の根の学校なども教育機関とされ、クリアすべき高い規定が設けられました(例えば雇用する教師の学歴など)。その結果、これをクリアできない多くの学校が不認可とされ、事業の継続ができなくなりました。

 

このような制度改革、改変はこれが初めてのことではありません。TEACA裁縫教室はこうした制度改革や改変があるたびに体制を整え直し、政府認定校であり続けてきました。しかし今回の制度改変でこれ以上の厳しいハードルが設定されれば、それをクリアするのは非常に厳しい、というよりむしろ、困窮家庭に手を差し伸べるという裁縫教室の在り方にもはやそぐわなくなると考えています。教育の質の向上は大切ですが、その結果切り捨てられる人たちの存在を忘れてはならないでしょう。

 

今般の制度改変を受け、TEACA裁縫教室にもNACTE専門官による査察が実施されました。NACTVETの下で認定が継続されるかについて、いつ結果をもらえるのか、明確な説明は得られていませんが、このままでは来年1月から始まる新年度に向けた生徒募集もできません。方向が定まらないと教会との連携も進めることができず、恐らく決定が下されてからではもう来年度の募集には間に合わないでしょう。

 

またたとえ認定されたとしても、多くの課題が突きつけられると思われ、それに合わせて体制整備を図ればさらに学費を上げざるを得なくなります。それではこの裁縫教室の存在意義が問われることになります。

 

当会は裁縫教室のNACTVETからの離脱に考えを傾けつつあります。かといって、政府の認定を受けずに裁縫教室の運営を続ければ法に触れることになります。どうするかについては今後TEACAと術を探らなければなりません。NACTVETの回答を待つ必要がありますが、それでも9月、遅くとも10月中には判断しなければならないでしょう。