キリマンジャロ山の環境調整機能

モシの町から望むキリマンジャロ山頂

写真: モシの町から望む切りまジャロ山頂

 

キリマンジャロ山の村々ではいま大雨季植林が取り組まれていますが、今年の植林はこれまでになく苦労しています。大雨季の雨で道の状態があまりにも悪く、苗木の運搬がままならないことが原因の一つです。

 

もっとも、植林地に近い苗畑から苗木を運べれば、こうした問題に頭を悩まされることもなかったでしょう。2年続きの年末の小雨期の降雨不足のため、多くの苗畑で苗木が枯れてしまい、遠く離れた外部からの苗木供給に頼らざるを得なくなったためです。

 

小雨季が終わり小乾季に入った今年1月には、森の水源に一番近い場所にある事務所ですら水の入手が困難となり、鍋やらバケツやらを持ち出して、水があるときに汲み置きしてしのぐことになりました。そんな状態が大雨季が始まる4月まで続き、事務所には水の確保ができない村人たちが毎日朝早くから水を求めてやって来ました。

 

雨不足で苗木が枯れてしまった苗畑

写真: 雨不足で苗木が枯れてしまった苗畑

 

苗畑に水を供給していた泉は完全に干上がってしまった

写真: 苗畑に水を供給していた泉は完全に干上がってしまった

 

キリマンジャロ山では小雨季の雨が減ったことから、小雨季に植林ができなくなってすでに久しくなります。それでもこれほど長期に水がショートすることはなく、一体どうしてしまったのかと、村人たちはとても驚き、困惑していました。

 

一方、山を下りたところにあるモシの町では、村ほど水に困ることはありませんでした。政府は麓の町に十分な水を送るため、山中の水源地から水を引くパイプラインの増強を進めています。それが村での水不足に少なからず影響していることは間違いありません。しかし、事務所まで水を引いている給水パイプの水源地に、新設された政府のパイプラインはなく、それだけが原因とはいえないでしょう。

 

こうした状況に山で何かが起きている、そういう思いを強くしました。これまで山や森が持っていた、環境変化に対する緩衝機能や調整機能が弱まってきていると思えました。これまでなら多少の降雨不足でもこうした機能のおかげで、たとえば水量の変化にしてもなだらかに抑えられていたものが、山や森の体力を超えてしまい、ちょっとした変化でもストレートに現れるようになったのではないかということです。

 

村の上部に広がる広大な裸地。場所によっては見渡す限り丸裸になっています。キリマンジャロ山は、この1世紀の間に多くの森を失いました。山や森が果たしてきた緩衝機能や調整機能も、それは失われるだろうと思わせる殺伐とした光景です。

 

山も森もこれまで多くの恵みを山麓住民にもたらし、彼らの生活や生業を支えてきました。その恵みを得ることは、森が国立公園に取り込まれて以来すでに困難となり、彼らの生活を圧迫しています。しかし、今後環境の変化が激しさを増せば、さらに大きな打撃となって村人たちを打ちのめすのではないかと危惧しています。

 

このようにキリマンジャロ山で「自然」と「人々の暮らし」を守る取り組みはもう待ったなしです。村人たちはすべての裸地を森に戻したいと願っています。許されるなら、いますぐにでもその作業に取りかかりたいでしょう。村の上部に広がる広大な裸地を前に、彼らがどれほど辛い気持ちでいるかを思うと切なくなります。

タンザニア・ポレポレクラブ

作成日時: 2023/06/21 19:07

寄付プロジェクト: よみがえれ、キリマンジャロの森!