森を守る改良カマド

モニター設置を進めている新型改良カマド

モニター設置を進めている新型改良カマド

 

キリマンジャロ山麓テマ村で新型改良カマドの試験設置が進んでいます。現地で一般的に用いられているのは“三ツ石カマド”と呼ばれるカマドですが、その名の通り地面に三つ石を置いただけの簡単なものです。調理は石の上に鍋を置いて薪で調理します。石を置くだけなので設置は簡単、特別な資材も必要なく、場所も選ばないという利点があります。一方、多くの熱が周りから逃げてしまうため薪の消費量が多く、そのため調理にも時間がかかるという欠点があります。

 

キリマンジャロ山ではこの100年間で森林が3割も減ってしまい、煮炊きに使用する森林資源(薪)の量も可能な限り減らすことが求められています。それ以前に森林保護を理由に村人たちは彼らの里山ともいえる森の利用を禁止されてしまい(国立公園化)、日々の煮炊きをする薪の採集にすら困難を抱えるようになっています。

 

そこで森林にかかる圧力を減らし、山麓住民が抱えている困難を緩和していくため、当会は改良カマドの普及に取り組んでいます。改良カマドは従来の三ツ石カマドから置き換えることで薪の使用量を6割以上削減できるためです。調理時間も短縮でき、火が消えても余熱が朝まで持つ(お湯がすぐに手に入る)など利便性も高く、村の女性には非常に人気があります。

 

 

とはいえその改良カマドにも欠点はあります。当会が普及しているのはエンザロ式カマドという、もともとケニアで日本人の専門家が普及していたものです。しかしキリマンジャロ山ではカマドに適した土の確保が困難なため、構造材にレンガが必要となっています。

 

またエンザロ式カマドの最大の特徴である、薪を一カ所にくべれば同時に三カ所で調理できるという長所も、火力の回りが不均等になる、鍋のサイズに融通が利かないといった問題がありました。カマドの普及速度をさらに高めるためにはこうした問題の克服が必要とされていましたが、長く解決策が見つからずにいました。

 

そこで当会はこれまで普及していた改良カマドの構造を全面的に見直し、新しいものに作り変えることにしました。その結果外見はさほど変わりませんが、中の構造はまったく異なるものになりました。この新型カマドの性能と問題点の見極めのために、現在テマ村の複数の家に試験カマドを設置し、モニタリングを開始しています。

 

いまのところ経過は順調で、噂を聞きつけた他の村の村人たちからも設置要望が相次いでいます。ただカマド職人の技量も非常に重要で、時間をかけて職人を育てる必要があります。こうした技量の定着を見極めるためにも、ある程度の数のカマドを先行して設置する必要があります。

 

4月初旬までかけてモニタリングを行い、問題があれば必要な改善を施したうえで最終型を固め、本格普及に移行する計画です。新型改良カマドは村人たちもさることながら、当会も大変期待しています。

タンザニア・ポレポレクラブ

作成日時: 2023/03/05 16:30

寄付プロジェクト: よみがえれ、キリマンジャロの森!