きこえない人ときこえる人をつなぐ「電話リレーサービス」の社会における認知度が依然として低いことが明らかに

「電話リレーサービス」利用者対象の調査結果から浮かび上がってきた3つの課題とは

 

 2021年7月1日から公的インフラとしてスタートした電話リレーサービスに関して、NPO法人インフォメーションギャップバスター(以降:IGB、所在地:横浜市港北区、理事長:伊藤 芳浩)は、本サービス利用者を対象に調査を行いました。(実施期間:2022年11月2日~2022年11月19日、回答者数:140名)

 本調査の内容及び調査結果詳細は弊団体の解説ページ(以下)をご覧ください。
https://www.infogapbuster.org/?p=5513

この調査結果からおもに以下3つのポイントが浮かび上がってきました。

(1) 社会における認知度の低さ
(2) 行政における普及啓発施策が継続的に行われていない
(3) 当事者(ユーザー)における理解不足(誤認識)

 今回の結果を2020年4月に実施した前回の調査結果と比較したところ、残念ながら電話リレーサービスの認知・普及が進んでいない状況が浮き彫りになりました。

1 <社会における認知度の低さ> に関して端的に言えば、周知不足と言わざるを得ません。日常生活において音声電話が使える人にとっては当たり前のことができず不便を強いられ困っている人がおり、そのために法に則った公的インフラとしてのこのサービスがあるということを、本サービスの提供事業者である日本財団電話リレーサービス、およびその監督官庁である総務省は、これまで以上に積極的に、かつ様々なソースを用いて広く周知していく必要があると考えます。広く効果的な周知によって、本調査の質問への回答に寄せられた多くの課題のうち半数は解決できるといっても過言ではないでしょう。


◆通話を切られた経験については、前回は19%だったところ、今回は32%と増加した。

2 <行政における普及啓発施策が継続的に行われていない> に関しては、電話リレーサービスのオペレーターを介した際にも本人認証が行えるように、おもに銀行や信販会社(クレジットカード事業者)などに対してこれまでも監督官庁の金融庁から要請が出されていたものの、現実としていまだに認証されずに手続きが進められないという声があがっていました。前項の周知啓発と同様に、特に監督官庁である総務省や金融庁が特定の事業者に対してこのような通達を継続的かつ効果的にさらなる積極性をもって行うべきといえます。
 ちなみに、IGBが2022年に行政と対話した結果については、以下をご覧ください。
https://www.infogapbuster.org/?p=5556



◆本人確認に関する質問では「断られたことがある」との回答が前回は44%だったのに対し、今回は51%と増加した。



◆断られた先については、クレジットカード会社が今回も最多。また銀行23件から44件と大幅に増加した。

3 <当事者(ユーザー)における理解不足(誤認識)> に関しては、おもに日本語が苦手な手話話者(ネイティブ・サイナー)がきちんと理解できるような説明方法をさらに講じる必要があります。
 例えば、電話リレーサービスに対して改善点や要望を伺った質問に対する回答の『オペレーターが電話先へ繫ぐ前に事前に用件をオペレーターに伝えても、もう一度話してくださいと言われ困惑。事前に伝えた時間も料金発生しているためお金返してと思う。』についていえば、電話のかけ先と繋がる前(相手が受話器を取り上げる前)までのオペレーターとのみ繋がっている間は通話料が発生しない、ということがわかっていないことによる誤認識です。
 本サービスの提供事業者である日本財団電話リレーサービスのWebサイトには、登録方法や使い方に関する手話動画は用意されていますが、ユーザーの利用に関わる細かな部分(特に料金設定に関する部分)などについても同様の準備があるとよりユーザーに寄り添ったサービスと言えるでしょう。
 なお、電話リレーサービスに関する詳細は運営事業者である一般財団法人日本財団電話リレーサービスのWebサイトをご参照ください。(https://nftrs.or.jp/

◆担当者のコメント
  

 電話リレーサービスが2021年7月1日から法に則った公的なインフラとして新たにスタートすることに先立ち、IGBは2020年4月に利用者実態調査を行ないました。
 そしてスタートから1年余りが経過した2022年11月に、その後の利用状況を探るべく、改めて「2022年度電話リレーサービス利用者への使用上の課題についてのアンケート」を実施し、それぞれの結果を抜粋して比較したものが本稿となります。
 それまでの試験運用のときと比べると、緊急通報が行える、24時間365日利用できる、聞こえる人から聞こえない当事者へも電話ができるなど、評価できる改善点は多々あるものの、おもに金融機関やクレジットカード会社などで見られる本人認証不可問題や、電話リレーサービスと聞いて怪しまれて切られてしまう認知度の低さなど、それまでにも知られていた課題が依然として残っていることが明らかになりました。
 特に、問い合わせ方法が音声電話しかないような場合、これらの課題は電話リレーサービスを必要とする当事者にとっては致命的な障壁(バリア)となり、せっかくの公的インフラが絵に描いた餅になりかねません。
 このような重要性を鑑み、IGBは電話リレーサービスの運営事業者である日本財団電話リレーサービス、あるいは電話リレーサービスや金融機関等の監督官庁である総務省や金融庁および経済産業省へ今回の調査結果を共有し、これらの課題の解消に向けてさらなる啓発を要望いたしました。
 発信者(利用者)と受信者(架電先)どちらにとってもメリットのある電話リレーサービスが、さらに使いやすく、誰でもが公平・平等に利用できる環境になり、すべての人が等しく情報を授受できる社会を目指して、IGBは今後も普及啓発活動を行うとともに、関係各所への提言を続けていく所存です。