皆様こんにちは、Piece of Syriaインターンの岡田です。
本日は、3月23日に開催された活動説明会のイベントレポートをお届けいたします。
現在Piece of Syriaが行っている支援のひとつに、トルコにあるシリア人の子どもたちのための補習校への支援があります。この補習校も、2023年2月に発生したトルコ地震の影響を受けました。
こうした状況の中で、子どもたちはどのような学習環境にいるのでしょうか。
Piece of Syriaスタッフの金澤(中央)とトルコ補習校の卒業生、その保護者の方々(左右)
今回の説明会は、代表の中野より現在トルコにいるシリア難民の状況をご説明したのち、現地入りしているPiece of Syriaスタッフと補習校のスタッフの協力のもと、トルコから中継を行う形で開催されました。
■トルコのシリア難民の「今」
2011年3月に勃発したシリア内戦を受け、2139万人いた国民のうち約56%にあたる1182万人が難民または国内避難民となりました。日本で言うと、関東・近畿・四国地方の人口を合計した数に相当します。
トルコはシリア難民の最大の受け入れ国であり、24年3月時点で約500万人のシリア難民がトルコの各地で生活しています。難民というと集団で難民キャンプで生活している印象が強いかもしれませんが、実際は雇用機会の多い都市部で家賃を払い住宅に住み、ビジネスを営んだりしながら生活しています。しかし、生活は決して安定しているとはいえません。
難民には大きく分けて2つのステータスがあります。Refugeeと呼ばれる難民認定を受けた人と、Asylum Seekerと呼ばれる難民認定を申請中であり、まだその認定を受けていない人です。トルコにいるシリア難民は、全て後者です。
更に、トルコではKimlikという外国人登録がありますが、Kimlikを有しているかいないかもシリア難民の生活に大きな影響を及ぼします。
トルコにおいて難民認定やKimlikを取得できないということは、様々な不安定要素をはらんでいます。例えば、難民認定されないと定住する権利がないため追い出される恐れがある、更にKimlikが無いと医療も教育も受けられない、という厳しい現実があります。
Kimlikを持っていたとしても、労働は認められません。従って、トルコでシリア難民が生き抜くためには多くの壁を乗り越える必要があるのです。
■シリア難民が受ける教育とは?私たちができることは?
このような状況において、シリア難民の子どもたちはどのような教育を受けているのでしょうか?
戦争直後はシリアで使用されていたカリキュラムでの教育が許されていましたが、戦争が長期化するにつれてトルコのカリキュラムの使用が義務付けられるようになりました。
シリア人の子どもたちはトルコ語での教育を受けることとなり、言語の壁や文化の違いなどを理由として学校に通わなくなる子どもたちも多く存在します。
近年では、トルコでの生活が長期化している結果、以前とは反対にトルコ語しか話せない、シリアをよく知らないシリア難民の子どもたちが増えています。こうした子たちがシリア人としてのアイデンティティを失わないようにするには、私たちは何ができるのでしょうか。
Piece of Syriaがトルコで運営に協力している補習校では、シリアの母語であるアラビア語の授業や、難民として生きる子供たち同士の交流の場を提供する活動を行っています。
更に、コーランの授業やアラビア語の歌を歌ってダンスを踊るアクティビティなどを通して、子どもたちが楽しく学べる環境づくりを行っています。
■現地からの声:トルコ・ガズィアンティップから生中継!
Piece of Syriaが運営に協力するトルコの補習校では、学習段階に合わせて3レベルのクラスが用意されています。
今回の生中継では、Piece of Syriaのスタッフが教室を周り、子どもたちや先生にインタビューをしながら質疑応答を行いました。
トルコ・ガズィアンティップにある補習校の外観(ガズィアンティップ市の建物を借りて補習校を運営しています)
レベル1の教室の様子
まず、レベル1の教室に入ると、すぐに2人の女の子が近寄ってきて歓迎の歌を歌ってくれました。こちらから質問を投げかける際も、質問してほしい!とこちらを見上げてくれます。
どの授業が好き?と質問すると、算数やアラビア語を挙げる子たちが比較的多いようです。
子どもたちにこの学校に通う前と後で何が変わったかを質問すると、「友達が10人できたこと」や「最初は全く分からなかったアラビア語で、今は名前が書けたり話せるようになったこと」などを挙げてくれました。
また、先生に同じ質問をすると、地震や長きにわたる難民生活で心理的な傷を負った子どもたちが同じ境遇に置かれる仲間たちが集まるコミュニティを獲得できたことや、アラビア語の習得を挙げてくださいました。
レベル3の教室に移ると、生徒たちが大きな声で「ありがとう!」と日本語で挨拶をしてくれました。この学校に通うことで得られた変化をサイド質問すると、集団の中でどのように人と接するか、良い人になるにはどうすれば良いかを学ぶことができた、という答えが返ってきました。
どの子どもたちも、新たな学問や言語を学べることだけでなく、自分の居場所を見つけられたことを嬉しく思っているようで、学校に来るのが楽しみだという声を聞くことができました。
親御さんからの評価も同様で、トルコ語しか分からなかった子どもたちがアラビア語を習得できていることを喜ばしく思っているそうです。一方で、もっと高い学習レベルのクラスを増やしてほしい、との声もありました。
■トルコでの生活と子どもたちの夢
生中継中は、視聴者の方からも数多くのご質問をいただきました。
中でも多かったのは、トルコでの暮らしや言語の壁についてです。
先生方や通訳の方によると、トルコにおいてアラビア語しか話せないことは多少の言語の壁を生んでしまうようです。
しかし、それは差別や迫害に結びつくようなものではなく、純粋な言語力の違いが生み出すものである、という点が強調されていました。
また、職を探したり病院にかかったりするなどの日常で欠かせない用事に関してアラビア語と英語しか話せないことが障壁になりますか、という質問に対しては、アラビア語とトルコ語の翻訳技術が発達しているため大きな妨げにはなっていない、とのことでした。
ある視聴者様が子どもたちに対し将来の夢を聞いたところ、たくさんの子どもたちが「自分が答えたい!」という意欲を見せてくれました。
多くの人命を救うお医者さんになりたい、宇宙飛行士になって太陽に行きたい、音楽の先生になりたい、など、幅広い夢を語ってくれました。
最後に、今後サポートが必要になるであろう分野に関してのご質問に対し、心理的ケアの充実という点が挙げられました。
2月に発生した地震の影響で戦争の記憶がフラッシュバックしてしまい、精神的な傷を負ってしまった子どもたちは多かったようです。今後は、アクティビティを通して心理的なケアをより充実させるという点が重要なニーズとなってくることが予想されます。
レベル1のクラスで勉強する子どもたち
■視聴者の皆様からのお声
イベント終了後、様々な視聴者の方がお声を届けてくださいました。
「参加前は中東支援について漠然とできたらいいなくらいでした。今回イベントに参加してみて、実際に具体的な特定のグループを支援することにおける難しさや方法に触れることができ、より現実的に考えるきっかけになりました。」(M.Oさん)
「以前、中野さんと学校を通して交流させていただいたのですが、その時よりも深く支援状況や、教育について知ることが出来たのでとても有意義な時間でした。将来、世界の子供たちに教育を支援する仕事をしたいと考えているので、その考えを深めるために役立つ情報をたくさん得ることができました。このような機会を設けていただきありがとうございました。」(A.Mさん)
■おわりに
今回の活動報告会では、トルコに生きるシリア難民の現在についてお話しすると共に、現地からの生の声をお届けいたしました。難民認定やKimlikの有無などの繊細な条件に左右されながらも、Piece of Syriaが支援している補習校で生き生きと学び、仲間を作る子どもたちの姿には元気づけられるものがあると思います。
この子どもたちへのこれまでの支援、そしてこれからの活動は全て、支援者の皆様のお力あってこそのものです。このイベントを通してご覧になったように、夢を語ることのできる子どもたちを1人でも増やせるように、ぜひこれからも皆様のお力をお貸しください。
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