小学3年生と水内貴英さん(美術家)のワークショップをご紹介します

 

小学3年生2クラス57人の子どもたちと取り組んだ、水内貴英さん(美術家)とのワークショップをご紹介します。

 

図工が大好きな3年生に、体育館を広く大きく使用しながら図工に取り組む機会をつくりたいという先生のリクエスト。美術家の水内貴英さんと、体育館の広い空間をいっぱいに使用して、「家」や「村」をつくるワークショップを実施することになりました。

 

 

 

スタッフが行う事前準備で、半透明のプラスチックダンボールでつくられた「家」を10個ほど体育館に設置しました。「家」には電球が付いており、体育館を暗くして「夜」の風景になる際は電球を点灯させます。まだ何も手を施していない白いままの「家」が、体育館には並んでいました。ワークショップ開始前、暗くした体育館に子どもたちが入って来ました。暗闇の中に白く光る「家」を見て、これから何が起こるのか、わくわくしている子どもたちの表情が印象的でした。

 

 

まずは、水内さんの自己紹介から始まりました。水内さんはタブレットを使用し、水内さんが手掛けてきた美術作品をスライドで紹介しました。大きな作品や不思議な作品など、様々な作品を見ることで、子どもたちはどんどんアートの世界に引き込まれていきます。

 

 

次に、水内さんがつくったオリジナルのお話を読み聞かせました。その内容は、「57人の旅人たちが水も無い砂漠をさまよっていたが、泉がある場所を見つけ、そこで村をつくることにした」というもの。子どもたちは「ちょうどぼくたちと同じ人数だ!」と、お話の世界のイメージを膨らませていきました。そして、子どもたちは旅人になった気分で、自分たちの「家」や「村」をつくる旅に出かけていきました。

 

その後は、子どもたちが自由に「家」を装飾していきました。ドアをつくったり、屋根を色づけたりと、すぐに思い思いの創作風景が広がりました。ワークショップでは、「ここまで出来なければいけない」というゴールはありません。次々と新しい装飾を考える子もいれば、ひたすらマジックで色を塗り続ける子どもたちもいます。それぞれのペースで、それぞれのアイディアやイメージを具現化していきました。

 

子どもだけでは出来ないことは、アーティストや先生など、大人にも手伝ってもらいながら進めていきます。「屋根の上にこんな風にアンテナを立ててほしい」「ここにこれくらいの窓をつくってほしい」と、自分のアイディアを他の人へ伝える方法を模索しながら進めていく姿もありました。

 

 

自分たちのグループの「家」がある程度完成したあとは、自由に隣の家へ遊びに行ったり、友達を招いたり、というやり取りが始まりました。ある家では勉強をしている子がいたり、昼寝をしている子がいたりもしました。郵便受けをつくった「家」があると、その家に郵便を配達しに行く子も出てきました。泉にはモールでつくった魚を放している子がおり、その魚を釣っている子もいました。布やポリ袋を身にまとい「民族衣装だ!」と、オリジナルの服をつくる姿もありました。

 

そのようなやり取りが始まってすぐにワークショップの時間が終わってしまったのですが、コミュニケーションをとり、生活に必要なものを生み出していく姿は、本当の村や社会が出来ていく様子を表しているようでした。

 

 

子どもたちは時間こそ足りないようでしたが、それぞれの発想を自由に活かし、工夫しながら完成させた「村」はとっても素敵で、今回の子どもたちならではの空間づくりができました。

 

最後にアーティストの水内さんは子どもたちに、「テレビゲームやパソコンゲームで何かをつくるのに比べて、実際に自分の思ったように実物をつくるのはどうだった?」と問いかけました。子どもたちからは「難しかった」「思ったようにできないところがあった」「決まったものではなく、自分の好きなようにできた!」などの感想があり、ものづくりの大変さと楽しさを体感したようです。水内さんとの出会いが、子どもたちにとって、何かしらの好奇心やわくわく感を引き出すものになっていたら良いなと思います。