セガマ島での活動報告2020年~世界のタイマイ産卵数とも比較してみた

セガマ島・ブサール島(以下、セガマ島)では、乱獲により絶滅に追い込まれているインドネシアのタイマイを守るため、認定NPO法人エバーラスティング・ネイチャー(ELNA)は現地パートナー団体YPLIと1998年から活動をおこなっています。

【2020年の実績】
2020年は新型コロナの影響により、日本からの渡航のみならずインドネシア国内でも規制がかかりました。4月に訪問する予定がキャンセルとなり、以後インドネシア人調査スタッフ(現地パートナー団体職員)もまだ島に行くことができていません。
 しかし、セガマ島での主軸の活動となる、タイマイ卵の保護(盗掘されないように監視)と毎日の産卵モニタリング調査は、常駐の監視員により、無事に継続実施されました。

2020年元旦に産卵に来たタイマイ

★保護実績
モニタリング調査の結果、2020年は島全体で1,925回の産卵がありました。
ふ化後の調査は上記の理由により実施できていませんが、過去の平均から推定すると、約109,000匹のタイマイ赤ちゃんが海に帰っていけたことでしょう。
ELNAの活動が無ければ、卵はほぼ根こそぎ食用で取られて売買されてしまいます。この約109,000匹の赤ちゃんを生み出せたのは、まさにELNAの活動実績と言えます。

建物の明かりによって迷子になった赤ちゃんガメを海に帰す常駐監視員

★1,925回の産卵は多いのか、少ないのか?
「1,925回の産卵があった」と聞いても、ピンと来ない方が多いのではないでしょうか。
インドネシアの主要産卵海岸を近年100島以上歩いて調査しましたが、年1,000回以上の産卵をしている所はありませんでした。
もちろんその時の産卵の跡を数えているだけなので、1年間確実に追えたわけではありませんが、同規模の産卵地は無かったです。
 では、世界の大規模タイマイ産卵地と比較してみましょう!
近年の状況と比較するためIUCNウミガメ専門Groupの地域報告を見てみると、メキシコは国全体で3,578回(産卵海岸275km)。グアドループは国全体で3,061回であり、その内マリンガラント島で1,975回※(周囲471kmほどの島)・グラン・キュル=ド=サック・マラン周辺で1105.3回※でした。これらの次に北大西洋&カリブ海地域で多い地域がキューパとセントルシアですが、規模は一気に下がってキューバが国全体で100~250回(8ヵ所合計)、セントルシアも全体で100~250回でした(3か所合計)。カリブ海から南下すると、ブラジルが多く、その中でも多いピパ海岸で2000-2500回(375kmの海岸)とあります。インド洋ではセイシェル諸島全体(主要調査海岸21島含む)で5,550回(海岸長193.3km)。チャゴス諸島のディエゴ・ガルシア環礁4島合計で3,081回(海岸長40.5km)、ペロスバンホス環礁36島合計で2,627回(海岸長41.2km)、そしてフランス領インド洋無人島群にあるグロゴリオソ諸島では、諸島全体で6,413回(海岸長7.83km)。あとオーストラリアの2ヵ所が多いのですが、近年の数値が不明ですし産卵海岸の規模が桁違いに広いので置いておきましょう(それ言うなら、メキシコもですが)。
繰り返しますが、上記の場所は、世界でも多いタイマイ産卵地だけをピックアップしています(キューパ・セントルシアは省いて)。
ちなみにセガマ島の周囲は約1.4kmです。
セガマ島はたった1つの小さい島で1,925回なので、“1,925回という数字がすごい多いんだな!”と理解できますよね。
※の数は上陸数なので、実際は少し少ないと想定される

★島内での産卵数の変動
セガマ島では、活動開始当初(98年から8年くらい)は年200回くらいしか産卵ありませんでした。それが保全活動の効果によって、活動開始9年目から増えてきています。
セガマ島では2020年も含めて、順調に増加が続いています。

【2020年の特別な出来事】
今年から、卵の保護システムが変わりました!
何が変わったかというと、監視員への給与システムが変わりました。今までは、守った巣の数に応じて支払いをしていたのですが、4月から一律で月給制にしました。
ELNA活動地では産卵が増えているため、増えるごとに支出も増えていってしまうことが懸念されていたため、月給制は費用削減効果があります。
月給制にすることで、産卵数のカウントを怠ったり(日々のモニタリング)、産卵回数を少なく報告して一部の卵をとってしまうのではないかと心配されましたが、1,975回という数字を見ると今のところその問題はなさそうです。
ただ、他の島では、月給制への変更や減給によって、報告してくる数値に違和感が発生しています。
セガマ島でも気を抜かずに活動を進めていきたいと思います。

産卵後に穴埋めをする母ガメとYPLI職員

ウミガメを守ることはウミガメ自体を救うだけでなく、海や海岸の生態系を守る事、ひいては私たち人間活動を守る事にもつながります。
アジア最大の繁殖地であるインドネシア、更にその中でも最大級の産卵を誇る重要な島の産卵地がこれからも守られていくよう、少しでも多くの方のご支援をよろしくお願いいたします。

★参考:なぜウミガメ保全が必要なのか?