取り残された人々への食料支援

レバノンでは、2024年9月にイスラエル軍によって大規模な空爆が行われ、一時は約90万人が避難を余儀なくされました。人々は再び紛争が激化する不安を抱えながら生活しています。AAR Japanはこうした中、国内避難民や特に困難な状況にある人々への人道支援を続けています。

 

福祉施設で届けられている食事(ベイルート県  レバノン 2025年4月)

AARは2025年4月から、十分な支援が行き届いていない山岳レバノン県を中心とした地域で活動を続けています。支援対象は国内避難民に加えて、高齢者、障がい者、重度の精神疾患を抱える人、GBV(ジェンダーに基づく暴力)被害を受けた女性とその子どもたちなどで、彼らが滞在する10の福祉施設で、これまで約2,500人に対し約42,000食の温かい食事を提供してきました。

 

工場で食事を作るShareQのスタッフ(ケセルワン・ジュベイル県 レバノン 2025年4月)

 

この地域はキリスト教徒の割合が高く、多くの福祉施設は修道女のグループなどの教会関係者によって運営されています。宗教や国籍を問うことなく、家庭や一般社会で暮らすのが困難な人たちを受け入れていますが、2019年の経済危機以降、政府からの補助金が大幅に削減され、多くの施設が運営面で深刻な問題を抱えています。孤立して行き場のない利用者と、必要なケアを十分に提供できない施設の双方が深刻な課題を抱えた状況にあります。

 

提供された食事をとる施設の女性(山岳レバノン県 レバノン 2025年4月)

 

AARは、現地協力団体のNGO「ShareQ」と連携して活動しています。同団体は主に、障がい者の雇用支援、職業訓練、困窮した人たちへの食料支援を行っており、障がいのあるスタッフも多く活躍しています。

 

 

2019年から続くレバノンの経済危機は「世界最悪レベル」とも言われており、国民の8割以上が貧困ライン以下の生活を強いられています。同時に、レバノンは人口1人あたりの難民受け入れ数が世界最多という現実も抱えています。こうした深刻な状況にもかかわらず、レバノンにおける人道危機は見過ごされがちです。現地では今もなお、支援を必要とする多くの人々が取り残されたままです。AARは、そうしたもっとも支援を必要とする人々に寄り添いながら、粘り強く支援活動を続けていきます。