オンライン相談(2025年6月~2025年7月)の報告
2025年6月 16件(ベトナム語13件、インドネシア語1件、フィリピン語2件)
2025年7月 20件(ベトナム語15件、インドネシア語1件、フィリピン語2件、クメール語1件、ポルトガル語1件)
★ 2ヶ月の合計 36件
★ 相談者の国籍:ベトナム28、インドネシア2、フィリピン4、カンボジア1、ブラジル1
★ 相談者の性別:女性18、男性18
★ 相談者の住所地:関西15、関東6、北陸4など
★ 相談者の在留資格:技能実習16、特定技能9、技術・人文知識・国際業務4など
★ 相談内容:労働29、在留資格7など
【相談事例から】
» 来日後3ヶ月目の技能実習生(介護)。監理団体に連れられてOTITに行ったが、そこで相談者には介護の業務に見合った能力がない、日本語ができないという理由で実習先を退職させる方向の話がされた。相談者は雇用の継続を希望したが、監理団体は、解雇になると転籍に不利になるので自己退職してはどうか、その後の生活も大変なのでいったん帰国してはどうか、と説得した。OTITの援助課職員は、監理団体には「法律に則って手続きをしてください」と、相談者には「解雇に不服などあれば労基署に相談してください」と言った。しかし、実習生の指導に責任をもつべき実習先が、日本語ができない等の理由で実習を打ち切ることについては、何の意見も述べず、実質的に黙認した。
⇒相談者は労働組合に加入。労働組合が実習先に団体交渉の申し入れを行った。実習先からはすぐに「まだ解雇はしていない」という回答があった。相談者はそれまで能力不足という理由で、清掃などの業務しかあたえられていなかったが、申し入れ以降、身体介助などの介護業務につくことができるようになった。
» 工業製品製造業の特定技能1号。この3ヶ月給料が払われていない。登録支援機関を通じて請求したが会社からの回答がない。明細は送られてきたが、振り込みはなく、登録支援機関から待っていろと言われているだけである。相談者は在留期限の関係で帰国した人を含めて6人いる。
⇒全員が労働組合に加入した。今後会社への団体交渉の申し入れや、会社が倒産した場合の立替払い制度の適用について、労働組合として対応していくことになった。
» 介護の特定技能1号。妊娠11週。つわりがひどく医師から休業するよう診断されて2週間ほど休んだ。その後状態は落ち着いて、医師から仕事をしてもいいという診断が出たが、雇用先の施設と登録支援機関は、このま» 縫製の技能実習生、技能実習2号に移行して2ヶ月目。同じ会社の先輩実習生に宿舎で暴行された。近くの交番に行き、病院の診断書もある。怖いので転籍を希望しているが、それまでは今の会社で働きたい。しかし、会社からは危ないので仕事を休むように、そして、個人的なけんかが原因なので会社には責任がない、休業手当は払わないとも言われている。OTITにも相談したが、転籍先探しは待つしかない、休業のことは、OTITから監理団体に対し会社に事実関係を確認するように連絡したと言われた。送り出し機関からはOTITに相談したことを責められ、転籍先は探してもらえないと言われている。
⇒相談者は労働組合に加入。労働組合が団体交渉の申し入れをしたところ、会社から、相談者を暴行した先輩とは別の部署で就労させるという回答があった。相談者は就労しながら、休業手当や暴行への謝罪、慰謝料などについて、労組を通して会社と継続して交渉していくことになった。
» 介護の特定技能1号。来日して9ヶ月目。自己退職して別の施設に移る予定。すでに新しい施設の面接には合格している。今後の手続などについて知りたい。今は施設の寮に住んでいるが、来日したばかりで知り合いもなく、寮を出たあと身を寄せるところはない。在留資格の手続き中は、転職先が住まいを提供(働き始めてから寮費を返済する)し、生活費も貸し付けてくれる場合があると聞いているが。
⇒特定技能の在留資格は、会社が変わると入管局に在留資格変更申請をしなければならず、許可されるまで働くことができない。今の施設を辞めてから次の施設で働けるようになるまで、早くても2~3ヶ月かかるので、それまでの住まいや生活費の問題を考えねばならない。面接に合格した施設、その登録支援機関に相談するとともに、今の会社での最後の給料は仕送りを控えて、できるだけ手元に残しておくようにした方がよいとアドバイスした。
» 農業の特定技能1号、養鶏業で2年半働いている。特定技能1号(建設)の資格もあるので、賃金の高い建設の会社に転職したい。カンボジアの学校に問い合わせたところ、1000ドル払えば紹介すると言われ、費用は書類代など諸費用だと説明された。日本国内でも斡旋業者に1300~1500ドルの費用を請求される。費用を払わずに転職する方法はないか。自分で直接数社と面接をしたが合格しなかった。
⇒この相談者はまだハローワークには行ったことがないということだったので、住所地の近くのハローワークを教えた。ハローワークでは探しにくいのは事実だが、がんばって探すしかないこと、信頼できる友人の伝手などを頼って探すことを勧め、SNS上の求人情報のなかには悪質な詐欺もあるので、充分に注意するようアドバイスした。
特定技能1号の労働者が雇用先を探すときに、登録支援機関、斡旋業者に費用を請求されるという相談は多い。日本の職業安定法では、労働者から紹介料をとることは禁止されている。ただ、請求される費用が紹介料なのか、在留資格申請などのための費用なのかは不透明で、後者の場合、雇用先、労働者のどちらが負担すべきなのかは法的にもはっきりしていない。実際には費用を払わないと雇用先が見つからないため、多くの労働者がやむなく支払っている。
特定技能1号労働者が独力で雇用先を探すことが困難である背景には、登録支援機関を通してしか労働者を採用していない会社が多いこと、ハローワークに行っても、ハローワークの求人情報では、その会社が特定技能1号労働者を雇用できるかどうかがわかりにくく探しにくいなどの現状がある。労働者が民間の斡旋業者を介さずに求職活動ができる公的仕組みの整備が必要である。
とくにカンボジアの場合は、特定技能労働者が会社を変わるたびにカンボジアの政府機関の登録証明書が必要とされており、それを理由に費用が請求されているという事情もある。今後の相談を通して実態を明らかにし、現状を改善するよう日本政府に働きかけていく必要がある。