知床ネイチャーキャンパス・リカレント2022の実習演習を実施しました。

公益財団法人知床自然大学院大学設立財団は、
2022年6月11(土)〜13日(月)、
当財団初の社会人向け教育プログラム
「知床ネイチャーキャンパス・リカレント2022」の
現地実習演習を開催しました。
現地知床での開催は3年ぶりで、
2月に実施したオンライン講義の受講生のうち、
20名にご参加いただきました。
6名の講師とともに知床の現場を歩き、
野生動物管理について理解を深めました。

実習演習1日目(6月11日)

アイスブレイキング・講義(会場:知床第一ホテル)

2月のオンライン講義を受講していた20名の受講生が初めて顔を合わせました。
初めはやや硬い表情の皆さんでしたが、
敷田講師によるアイスブレイキングを通じてすっかり打ち解けました。

講義では敷田講師から管理計画についての基本的な考え方、
秋葉講師から演習で扱うカムイワッカ地区の概要と
今日の取り組みを紹介していただきました。
受講生は基礎知識をしっかりおさえた上で実習へと出発しました。

アイスブレイキング



現地実習1 魅力的な観光資源の活用と安全管理(実習場所:カムイワッカ地区)

観光資源の活用と安全管理の両立に向けた取り組みが進められているカムイワッカ地区では、
温泉の滝やその周辺を歩き、潜在的な観光資源の発掘を行いました。

また落石や転倒のリスク、及びそれらを防ぐための安全管理について、
秋葉講師や山田講師の解説を聞きつつ、自らの身体を通じて考えました。
2日目に控えていた演習に向けて有意義なフィールドワークとなりました。




現地実習2 利用調整地区制度に基づく公園管理(実習場所:知床五湖)

知床を代表する観光地であり、
利用調整地区制度が適用されている知床五湖の管理システムを、
ガイドツアーへの参加を通じて学習しました。

今回はヒグマが活発に活動する「ヒグマ活動期」に
該当する時期での訪問となりました。
定員による利用者のコントロールやガイドシステム、
地上遊歩道と高架木道を活用した利用スタイルの提示など、
常にヒグマが出没する可能性のある中で、
どのように利用者の安全と質の高い観光体験を両立しているのかを学習しました。

管理システムだけでなく、質の高いガイディングからも
多くのことを学んだという声が聞かれました。




実習演習2日目(6月12日)

現地実習3 河川工作物の改善と河川生態系の回復(実習場所:岩尾別川流域)

 

河川生態系の回復の取り組みが進められている岩尾別川流域で、
サクラマスの遡上を可能にするために改良されたダム、
これから改良予定のダムを見学しました。

加えて、斜里町が2021年に作成した手づくり魚道は
昨年の豪雨により壊れてしまいましたが、
今年度中に再チャレンジするということであり、
試行錯誤の中で生態系回復の取り組みを進めていることを学びました。

 

 


現地実習4 エゾシカ管理と植生回復(
実習場所:岩尾別川台地)

 

「知床半島エゾシカ管理計画」に基づき
個体数調整が進められている岩尾別台地では、
大型仕切り柵を用いたシカの個体数調整について、
宇野講師、梅村講師、梶講師に解説していただきました。
実物を目の前にしてその規模の大きさに
驚きの声が上がりました。


大型仕切り柵に向かう途中で幸運にもヒグマの糞を発見し、
DNAサンプルを採取する様子を見ることができました。
知床におけるヒグマ管理を支えている
データ収集プロセスの一端を知ることができました。

 

演習2〜5 カムイワッカ地区のデザイン(会場:知床第一ホテル)

 

総まとめとなる演習では、
敷田講師と秋葉講師のファシリテーションのもとで、
デザイン思考でのカムイワッカ地区の模擬管理計画作成に取り組みました。

演習は3つのセクションから構成され、
まず各班は管理ビジョンの文章化を目指しました。
続いて管理の範囲や資源を特定し、
管理上の課題の検討を行いました。
最後に管理者や運営資金を含んだ、
実現可能性・持続可能性の高い管理計画の作成に取り組みました。
各班には一人ずつ講師がつき、ディスカッションの進行をサポートしました。

管理計画の最終発表では、
受講生間や講師との活発な意見交換が行われました。
限られた時間ではありましたが、
管理計画作成のエッセンスを学ぶことができた演習でした。




講師(敬称略)

秋葉圭太(公益財団法人知床財団 公園事業推進プロジェクトリーダー)
宇野裕之(東京農工大学大学院農学研究院特任教授)

梅村佳寛(公益財団法人知床財団 保護管理部保全研究係主任)
梶 光一(東京農工大学名誉教授)
敷田麻実(北陸先端科学技術大学院大学教授)
山田秋奈(環境省釧路自然環境事務所ウトロ自然保護官事務所国立公園管理官)


主催:公益財団法人知床自然大学院大学設立財団
後援:環境省釧路自然環境事務所

助成:本事業は公益財団法人自然保護助成基金第32期(2021年度)プロ・ナトゥーラ・ファンド助成を受けたものです。