「日本から来てくれて本当にありがとう」:ウクライナ西部の修道院を訪問


モンベルのTシャツを着て勢揃いした子どもたちと堀江良彰AAR理事長=ウクライナ・テルノピリ州のヤズローヴィツ修道院で2022年7月29日(中坪央暁撮影)

AAR Japan[難民を助ける会]の堀江良彰理事長は7月末、ウクライナ西部テルノピリ州にある修道院を訪問し、ロシアの軍事侵攻を逃れた国内避難民の女性や子どもたちに会いました。AARは今年3月以降、隣国ポーランド、モルドバを拠点に難民・避難民支援に取り組んでいますが、ウクライナ国内に直接支援を届けたのは初めてです。AAR東京事務局の中坪央暁が現地から報告します。

 

「よくいらっしゃいました。日本から私たちに会いに来てくれて本当にありがとう」
ポーランド南東部から車で国境を越え、ウクライナ西部の中心都市リヴィウ経由で到着したテルノピリ州ヤズローヴィツ村。村はずれの美しい林の中にたたずむ修道院で、シスターや子どもたちが笑顔で迎えてくれました。

中世の古城に隣接して19世紀に建てられた修道院には、ロシア軍の攻撃が始まった2月下旬以降、ウクライナ東部や南部から避難して来た女性や子ども(乳幼児~10歳前後)を中心に一時は100人以上が身を寄せ、7月末時点では約60人が滞在しています。世話をする同行者がいない高齢の女性も複数含まれ、私たちの滞在中にも東部から逃れて来た母子が新たに到着しました。


修道院の一室に設けられた臨時の幼稚園で


修道院の庭に設置された遊具で遊ぶ幼い子どもたち

ポーランド人の修道院長、シスター・ユリアは「ここに長く留まる母子もいれば、しばらく滞在してポーランドに移っていく人たちもいます。国内の物流が滞る中、この修道院は近隣の避難者や地域住民、地元の病院に支援物資を分配する拠点にもなっています」と説明します。修道院に集積された食料や医薬品・衛生用品の一部は、他の支援物資と一緒に、生活物資が不足する東部に送られています。

 

物流が止まった時のために備蓄された缶詰などの食料

AARは3月以降、ポーランドの首都ワルシャワ郊外に本部を置くカトリックの修道会「汚れなき聖母マリアの修道女会」と連携して、当会に寄せられたご寄付を原資に食料や医薬品、衛生用品、衣類、家電製品などを調達し、ヤズローヴィツ修道院に陸路輸送する支援を実施してきました。AARは特定の宗教を背景とする団体ではありませんが、ウクライナ国内にネットワークを持つ信頼できる現地パートナーとして修道会と協働しています。

AARの支援を受けて、修道院では母子たちが居住する部屋、キッチンの設備、屋外の遊び場、万一の場合に備えた地下シェルターなどを整備したほか、医療関係者との協力の下、医薬品を備蓄した医務室を設けました。また、ウクライナ国内では学校休校の代替措置としてオンライン授業が行われており、小学生たちは4月以降、AARが提供したパソコンで授業を受けています(7月末時点は夏休み中)。


修道院の医務室で医薬品をチェックするポーランド人のプラウスキー医師。多くの関係者が両国間を往復して国内避難民を支援している


AARが提供したパソコンを使う小学生たち。今は夏休みだが、学期中はこうしてオンライン授業を受けている

モンベルのTシャツをプレゼント


子どもたちにひとりずつTシャツを手渡す堀江

今回の訪問では、アウトドアブランドの株式会社モンベル(本社:大阪市)から贈られたTシャツを持参し、堀江理事長が子どもたちにひとりずつ手渡しました。さまざまな柄のTシャツは子どもや母親たちに好評で、早速着替えたディマ君(8歳)は「戦争をしている国に来てくれるなんて、すごいと思う。とても素敵なTシャツをもらって嬉しい」。ナターシャさん(8歳)も「Tシャツをありがとう。他所にいる友だちに自慢したいです」とはにかんだ笑顔で話しました。

修道会を通じた支援活動は、すべて当会に寄せられたご寄付によって行われています。皆さまの温かいお気持ちは、確かな支援の形になって現地に届いています。引き続き、AARのウクライナ難民・国内避難民支援へのご協力をお願い申し上げます。
ご協力はこちらから↓
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