追い詰められる障がい者世帯:ミャンマー緊急支援

ミャンマーの非常事態宣言発令(2月1日)から5カ月余り、政治・社会の混乱は収まらず、少なくとも市民890人が犠牲になるなど、先行きが見えない状況が続いています。加えて、6月以降はインド国境沿いの地域を中心に新型コロナウイルスの感染が急増し、今月に入って1日の感染者数が2,000人を超えています。7月2日にはミャンマー第2の都市マンダレーに外出禁止令が発令されました。

治安悪化とコロナ感染による二重の恐怖を抱いて人々が暮らす中、AAR Japan[難民を助ける会]は5月以降、混乱の影響で経済的に追い詰められた障がい者や困窮世帯に対する緊急支援を実施しています。7月1~2日には最大都市ヤンゴン市内の障がい児家庭30世帯に支援物資を配付しました。現地では少し目立った行動をとるだけで危険にさらされる恐れがあるため、治安状況を慎重に確認したうえで、現地職員ができるだけ目立たない形で、2カ月間分のコメや食料油、缶詰などの食料品に加え、コロナ対策としてマスク、手指消毒液などの衛生用品を渡しました。

 

AARから受け取った食料や衛生用品を運ぶ障がい者の家族

 

「日本からの支援に感謝します」】

ひとりで自宅で勉強するシュエちゃん

 

シュエ・パズーちゃん(10歳)=仮名

 

ヤンゴンで暮らすシュエちゃんは、明るく活発な女の子です。脳性まひによる発語障がいで手指を細かく動かすことができないため、AARは理学療法士によるリハビリや学習教材を提供し、普通学校への通学をサポートしてきました。コロナ対策として昨年3月から休校となっていた公立学校は、今年6月に再開したものの、治安面の不安などから多くの保護者が児童の通学を見合わせており、シュエちゃんも自宅で過ごしています。

 

 

電気技師として働くお父さんの仕事はコロナの影響で減ってしまいましたが、それでも何とか家族を養うだけの収入を得ていました。そんな中、追い打ちをかけるように2月に非常事態宣言が発令され、治安が悪化して仕事が全部なくなってしまいました。そこで、お母さんが家からバスで片道2時間かかる工場で働き始めました。

 

 

シュエちゃん一家が住む地域は、ヤンゴン市内でも特に治安が悪化しており、地域のリーダーが暗殺されたり、役所で爆発事件が起きたりしています。シュエちゃんは家の外が危険な状況にあることを理解していて、仕事に出かけるお母さんを心配しています。お母さんは「娘を残して仕事に行くのはかわいそうで、毎日、後ろ髪をひかれる思いで家を出ます。AARの支援を受けて日々の食事を賄い、娘の教科書や栄養剤を購入しています。世界中の人々がコロナ禍で大変な思いをしている中、遠く離れた日本から私たちに支援をしていただけることを、とてもありがたく思っています」と話してくれました。

 

AARは治安状況を見極めながら、7月中旬に同様の緊急支援を実施する準備を進めています。より多くの障がい者や困窮世帯に支援を届けるために、引き続き、皆さまの温かいご支援をよろしくお願い申し上げます。