ホンジュラス・ハリケーン被災者緊急支援・復興支援活動 最終報告書

 

1. 背景

2020年11月上旬、巨大ハリケーン「エタ(Eta)」が中米諸国を襲い、AMDAグループの特定非営利活動法人AMDA社会開発機構(以下AMDA-MINDS)が活動を行っているホンジュラスにも上陸し、全国各地で多くの洪水や土砂災害を引き起こした。同国政府の発表によると、約164万人が被災し、約1万人が避難生活を余儀なくされた(11月6日時点)。さらに同月中旬には、別のハリケーン「イオタ(Iota)」が同国を通過、これら2つのハリケーンによる被災者は、延べ466万人以上に上った。

母国の甚大な被害を受け、同月17日には駐日ホンジュラス共和国特命全権大使アレハンドロ・パルマ・セルナ閣下がAMDA-MINDS本部事務所(岡山市)を訪れ、同国への支援を要請された。AMDAとAMDA-MINDSはこれに応え、共同で現地の支援活動を実施することを決定した。

 

2. 活動概要

11月の支援活動決定後、AMDA-MINDS及びAMDAホンジュラス支部は、現地協力団体らと情報収集の上、緊急で支援を必要とする避難者などに物資を提供した。12月に緊急支援のニーズがないことを確認、緊急支援活動は終了したが、ハリケーンによる被害は深刻であり、その後も現地協力団体らと協議を重ね、復興支援として支援活動を実施した。

*現地での主な実施団体・協力団体: 

AMDA-MINDS、AMDAホンジュラス支部、テウパンセンティ市緊急対策委員会、テウパセンティ市サラディーノ地区保健委員会、保健所、(エル・パライソ県)グイノペ市民環境保護団体(G.GUIA)

 

3. 緊急支援・復興支援 活動詳細報告

 

【緊急支援活動】

1) 支援物資の提供: テグシガルパ市(首都)

背景:ハリケーン・エタによる大雨で地盤が緩んでいたところ、10日後のイオタにより地すべりが発生。当該地域の隣住民が避難を余儀なくされた。その後の長雨により、相次いで地すべりが発生し、自宅に帰れない状況が続いていたため、AMDA-MINDSが過去に実施した事業の受益者を通じて、物資が手に入りにくい地域の避難所へ、必要な物資を届けることになった。

実施期間:2020年11月-12月

内容:2か所の避難所(16世帯56人)および1か所の老人ホーム(10人)に対し、以下の支援物資を提供した。簡易コンロ、水、赤ちゃん用おむつ、ミルク、ウェットティッシュ、絆創膏、マスク、生理用ナプキン、トイレットペーパー、清掃用品、解熱剤、下痢止め薬など。また、人数の減少で最終的に余った清掃用品を、1か所の孤児院に寄贈した。

 

 

2) 支援物資の提供: エル・パライソ県テウパンセンティ市

背景:AMDA-MINDSが現在事業を実施しているエル・パライソ県テウパセンティ市で、行政による緊急対策委員会から情報を収集した。一部の地域で、屋根が落下したり壁がひび割れて雨漏りしたりしている家の住民が避難していた中、イオタ(2つめのハリケーン)通過後も降り続いた雨による被害の拡大も見られ、141世帯が被災した。これらの状況を踏まえた同委員会からの依頼に応じ、支援が行き届いていない地域に住む、被災された50世帯に支援物資を提供することになった。

実施期間:2020年12月

配布物資:食料、毛布、衛生用品(石鹸、トイレットペーパー、おむつ、マスク、アルコール等)のセット及び、おむつなどを含む乳幼児キット(25世帯分)

 

【復興支援活動】

①小学校屋根の改修: エル・パライソ県テウパンセンティ市内のフアン・ラモン・モリーナ小学校

背景:フアン・ラモン・モリーナ小学校は以前より、トタン屋根の隙間から雨漏りしていたが(教室には天井がない)、ハリケーンの激しい雨で損壊部分が悪化し、教室が水浸しとなった。同小学校と関係が深いサラディーノ地区の保健委員会を通じてAMDAホンジュラスへ支援依頼があり、関係者間の協議を経て、支援を決定した。

実施期間:2021年2月-6月

内容:フアン・ラモン・モリーナ小学校の屋根部分を修復するとともに、天井を設置し、降雨が子どもたちの学習の妨げにならない環境を整えた。

2月に同地区保健委員会と保健所、大工らとの打ち合わせや準備を開始し、3月下旬に改修工事に着工、6月8日に完工した。

 

 

②農業技術(栽培)指導: エル・パライソ県テクシグア市アグア・カリエンテ村

背景:アグア・カリエンテ村は市の中心部から車でも2時間程度かかる川辺にある。ハリケーン「ミッチ」(1998年)の際に川の増水で橋が流されて以降、修復されず、現在も村から出るときは、川を歩いて渡らなければならない。今回は家屋浸水などの被害は免れたが、収穫間近であった主要作物は被害を受けてほぼ全滅した。乾燥地帯で生産性が低く、作っている作物がもともと少ないことから、食料の確保が困難な状況に陥っていた。電気が通っていないなど、市の支援も届きにくく、貧困度の高い村であることから、災害などへのリスクヘッジのみならず、中長期的に家族の食料を確保できるよう、被害を受けた農民が畑を回復させるのに合わせて、生産性を高めるための支援を行うことを決定した。

実施期間:2021年2月-8月

内容:自然環境と調和した農業を推進している現地NGO、G.GUIA(Grupo Güinopeño Ambientalista:グイノペ市民環境保護団体)を協力団体として、乾燥地帯でも多様な作物を栽培することで、自然災害や干ばつなどにもある程度耐え、長期的にも食料を確保できるようになる農業技術指導を下記のように行った。

 ・土の養分が雨で流れ出しにくくする

 ・単一の作物に頼らず、多様な作物を栽培することで被害の集中を避ける

 ・現地に昔からある作物(=土壌に合っている)の栽培をなるべく重視する

 ・現地にある資源を用いた堆肥や減農薬殺虫剤の作成方法

 ・環境を守る観点に立った農業 など。

 

さらに、被災した家庭の子どもたちの栄養摂取を支援するため、またほとんどの世帯が農民であることから、子どもたちにも災害に強い菜園づくりを伝えるために、村の小学校で学校菜園に取り組むことを決定した。この小学校には水が全くなかったため、水源から水を引いてこられるようにホースも寄贈。結果として、小学校で収穫した野菜で調理された昼食を子どもたちが食べられるようになった。

 

7か月に及ぶ基礎的な指導により、受益世帯はカボチャ、ニンジン、豆、バナナ、イモ類、赤かぶなど、多種多様な作物を栽培、収穫できるまでになっている。