避難所での医療支援活動 | 令和2年7月豪雨

特定非営利活動法人ジャパンハート(東京都台東区、理事長吉岡春菜。以下、ジャパンハート)は、九州を中心に甚大な被害をもたらした「令和27月豪雨」を受け、災害発生当初より当団体iERInternational Emergency Relief)チーム先遣隊が現地で被害状況と医療ニーズ等の調査を進めました。調査結果をうけ、78日に熊本県南部の八代市が運営する避難所に、医療者派遣及び物資支援を実施することを決定し、79日より本隊の派遣を開始。810日には人吉市の避難所にも活動の幅を広げ、831日に熊本での全活動を終了しております。

 

本緊急救援に至るまでの経緯

ジャパンハートでは、74日に発生した令和2年月豪雨の報道を受け、九州地方の関係者およびiERネットワークを通して被害情報の収集を始め、同時に、被害状況が深刻な九州地方に先遣隊を派遣しました。集まった情報をもとに78日、熊本県南部エリアの避難所での物資・医療支援を決定しました。現地では、被災した医療施設・福祉施設を訪問しながら聞き込み調査実施、避難所での医療支援および物資支援の要請を受けました

 

避難所での支援

熊本県八代市「八代トヨオカ地建アリーナ」での医療支援について

八代市の避難所には79日時点で近隣住民約250人が身を寄せており、多くの不安を訴える声が寄せられていました。ジャパンハートはこうした中、複数機関と連携しながら現地ニーズに即した医療支援を行うことを決定。長期化するとみられていた避難生活に備え、医療者による日々の健康サポートや、避難所で必要とされる物資の支援を行いました。

 

■熊本件人吉市「人吉スポーツパレス」での医療支援について

看護協会災害支援ナースの派遣終了に伴い、ジャパンハートが引き継ぎの要請を受け、熊本県人吉市で最も多くの住民が避難する人吉スポーツパレスでの医療支援を810日より開始しました。具体的には、医療従事者による日々の健康サポートや応急処置の対応、さらに被災者の自宅の片付け作業に伴う怪我の処置や健康問題を抱えるケースへの対応、避難所で必要とされる物資の提供支援などを実施しました。

 

支援者であり被災者であるという事 - 人吉市避難所支援活動レポート

熊本県人吉市の避難所に対する熊本県看護協会災害支援ナースの派遣終了に伴い、ジャパンハートが引き継ぎの要請を受けました。ニュースでも度々報道されていたように、人吉市は、八代市と同様豪雨により深刻な被害を受けた地域です。私たちは、市内で最も多くの住民が避難する人吉スポーツパレスでの医療支援を810日より開始しました。

 

人吉スポーツパレスには、発災当初700名以上の避難者が身を寄せていましたが、徐々に帰宅や仮設住宅への入居が進み、ジャパンハートが支援を開始した810日には約340人まで減少していました。しかし、長く続く避難生活で、多くの避難者から不安や不調を訴える声が寄せられていますが、新型コロナウイルス感染拡大が止まない現状においては、各医療機関による県外からの人員派遣が難しく、また県内からの医療従事者の受入も簡単には進まない状況でした。

 

八代市の避難所との大きな違いは、被災場所と避難所が近いという事、また市の中心部が被災したため、会社や商業施設など多くの経済基盤が失われ、また、それを支えてきた方々が被災しているということがあります。

 

親世代の方々は自宅の片付けに行かれるため、釘が刺さった、ガラスで切ったなどで怪我をしたり、慣れない重労働で腰や肩を痛めたり、40度近くまで気温が上がる中での片づけで(人吉市は盆地です)熱中症症状を訴えたりと、様々な理由で救護所にいらっしゃいました。

 

日々活動を行う中で、気にかかることがありました。

市の職員さんが疲れているのか、何だか元気がないのです。

 

活動開始後、数日が経過し、その理由が分かりました。

市の職員さん達も「被災者」だったのです。

本来なら家屋の片づけに行くところを家族や親せき、友人にお願いし、自身は避難所で被災者のケアを行っているという実情がありました。避難所から避難所に通っている方もいます。

本来ならケアを受けるべき人がケアを提供する側になっている。「支援者が被災者」というとてもタフな状況です。

 

私たちは、避難者のケアを行うために避難所活動を行っていますが、改めて、ジャパンハート災害支援の軸である「支援者の支援」に立ち戻り、支援者がどういった状況にあるのかを丁寧に見極め活動を行うことの大切さを感じました。

 

発災から約2か月が経ち、ジャパンハートの医療チームも現場の医療ニーズの減少に伴い、8月末をもって撤収しました。しかし、被災した方々が災害前の状態に戻るまでには、今しばらくの時間が必要です。

 

ジャパンハートはこれからも、国内で最も信頼できる医療NPOであるために、現場のニーズに寄り添う息の長い支援の在り方を、模索していきます。

 

ジャパンハート

作成日時: 2020/08/31 11:26

寄付プロジェクト: 九州豪雨災害への緊急救援