6月29日(月)、大阪医科薬科大学医学部の「公衆衛生学実習研修」の2日目を行いました(1日目の様子はこちら)。
2日目は、弁護士や医師からの講話、ロールプレイやワークショップ、西淀川・公害と環境資料館(エコミューズ)の見学、最後は2日間の学びのふりかえりを行いました。
講義「弁護士からみた西淀川公害」
まずは、西淀川公害弁護団弁護士であり、あおぞら財団理事長・村松昭夫氏から、西淀川公害訴訟の経過や和解後の歩みについてお話しいただきました。
西淀川公害の発生、市民の訴え、公害訴訟の難しさ、和解後の歩みを語ってくれました。日常生活でなかなか会えない弁護士の語りなので、訴訟に関する質問が寄せられました。
Q.訴訟を進める中で、許せなかった反論は何ですか?
A. 病気で苦しんでいる患者さんが「ニセ患者」と疑われることです。
Q.国道43号が建設された目的は車両をより大量に通過させることですが、裁判ではどのような規制を求めましたか?
A. 道路という公共空間を再配分することです。道路には自動車だけではなく、歩行者も自転車も通していますから。
Q.西淀川公害訴訟で、この10社企業を被告企業にした理由は何ですか?
A. 当時、大阪市立大学の図書館で、各企業の鉄鉱石、石炭の消費量を調べてきてSO2の排出量を推計し、その結果から排出量の多い10社を選びました。大体は大企業ですね。

あおぞら財団理事長・村松弁護士による講義
ロールプレイ「あなたのまちで公害が起きたら」
続いて、公害が発生した地域を想定し、市役所の係長、市民、工場、医者といった役割を演じてもらって、課題解決を考えるロールプレイを行いました。
公害問題に対して、被害者(市民)が「クラウドファンディングして、公害問題の原因を特定する調査を行う」というアクティブな提案も出されました。おそらく、1日目の研修で語り部の積極的な患者さんの言葉が心に響いたためではないかと思われます。残念ながら、当時の公害被害者は、企業とやり取りをした時に、言いたいことすらもちゃんと言えなかったらしいです。
また、工場長役では操業停止や新製品開発の中止を受け入れる判断は少なく、経済活動と健康被害の間で意思決定することの難しさも浮かび上がりました。現在の視点で振り返ってみると、公害の元凶である工場が操業を停止していたら、その後の公害病も出ずに済んだ可能性があったかもしれません。

ロールプレイを通して合意形成について考える学生たち
西淀川・公害と環境資料館(エコミューズ)の見学
昼休みをはさみ、資料館見学を行いました。
資料館の専門学生スタッフ関谷が、現在資料館に保存される6万点の資料をまとめ、先週出版された『必携 西淀川公害基礎資料集』を紹介してくれました。
この資料集では、公害発生以前から公害訴訟後まで、西淀川公害の歴史を時系列でたどることができます。

資料館の所蔵資料を見学
ワークショップ「あなたの街の地球温暖化対策を考えよう!」
次は、地球温暖化対策についてワークショップを行いました。
ロールプレイを通して、立場の異なる人同士で合意形成を図る難しさを体験した後、9つの温暖化対策を重要度順に並べる「ダイヤモンドランキング」に取り組みました。
提示していた9つの対策案を、各グループに重要順で並び替えてもらって、その理由を語ってもらいました。「計画の重要さ」、「実行のやすさ」、「行政介入の重要さ」などポイントに着眼して、各グループはそれぞれ異なる重要度順に並び替えてくれました。

各ダイヤモンドランキングに基づき谷内が解説している
「にしよど公害かるた」で、西淀川公害を知る
リフレッシュを兼ねて、「にしよど公害かるた」を体験してもらいました。このかるたは龍谷大学政策学部清水ゼミの学生たちが、公害患者さんへのインタビューをもとに制作したものです。一枚一枚に患者さんの言葉や思い、西淀川公害の記憶が込められています。
かるた遊びを通して、脱硫装置が壊れた工場附近の家で、小学生が育てていた「朝顔が一晩で枯れた」エピソードを学生たちに知ってもらいました。

にしよど公害かるたを体験
医師からの講義 「大気汚染と健康」
続きましては、公益財団法人淀川勤労者厚生協会副理事長、同附属相川診療所院長、あおぞら財団理事・大島民旗氏が、医者視点からみた西淀川公害について講義してくれました。
大島氏ご自身のぜん息状況が居住地によって変わったことを皮切りに、公害地域と公害病の講義に入りました。公害病の発生や診療といった一般知識を紹介するだけではなく、医者は「SDH」=健康の社会的決定要因に目を向けるべきだと大島氏が語っていました。人の健康を川にたとえると、体調が悪くなることはすでに下流部分でした。医者は、その下流である部分を改善、人々の体調を崩さないようにするために、上流である社会構造にしっかり注目すべきだと大島氏が強調しました。すなわち、公害病の抜本的な対策は、公害問題を発生させる社会構造の是正だと思われます。

講義をしている大島氏
2日間の学びのふり返り
最後は、この2日間の研修での学びを振り返って、どのような学びが出来たか、今後どう生かしていきたいかについて、グループで議論し、最後は「KP(紙芝居プレゼンテーション)法」で発表していただきます。
発表では、
・公害は教科書の中だけの出来事ではなく、今の社会にもつながる問題だと感じた。
・医師は病気だけではなく、患者さんを取り巻く環境にも目を向ける必要がある
・経済成長は美談だけではない
・過去の人の声を多角的な視点で捉えることができた
といった感想が共有されました。

ふり返りを発表している
2日間の研修で、立場がそれぞれ異なるステークホルダーの公害に関する話を聞いてもらいました。皆さんが医療の道に歩む時に、ささやかな力になれば幸いと思います。
(あおぞら財団アルバイト 王子常)