5月17日(日)、京都産業大学法学部の焦先生とゼミ生19人と西淀川の公害と地域再生を学ぶ研修を受入れました。
今回の研修では、西淀川区内のフィールドワーク、フォトランゲージ、西淀川公害に関する講義、公害患者さんのお話、そして西淀川・公害と環境資料館(エコミューズ)の見学を行いました。
●フィールドワーク
朝9時にJR「御幣島」駅から出発し、歌島橋交差点、大野川緑陰道路、姫里の住工混在地域などを巡り、公害地域の現状、歴史および公害・環境対策を感じてもらいました。
歌島橋交差点は、かつては全国でも有数の渋滞ポイントでした。3本の幹線道路が交差する五差路であり、普通の十字路よりも複雑な交通状況があります。この交差点では、渋滞対策として地上の横断歩道が撤去され、地下歩道が整備されています。患者会は道路連絡会で横断歩道の存続を求めましたが実現せず、現在も歩行者の利便性について課題が指摘されています。

五差路の歌島橋交差点で解説をする
大野川緑陰道路は、高度経済成長期に深刻に汚染が進み、ドブ川になりました。大阪市が川を埋め立てて自動車専用道を建設する計画を示した際、住民は反対運動を展開し、緑あふれる遊歩道を提案しました。大阪市の住民の提案を聞き入れ、現在の自転車道や遊歩道を備えた緑陰道路として整備されました。

大野川緑陰道路で説明をする
緑陰道路から住宅地に入ると、工場と住宅が混在する地域が広がっています。マンションのすぐ前に工場が立地するなど、住工混在地域ならではの風景を見ることができます。

住工混在地域を歩く
●フォトランゲージ「西淀川公害」
フィールドワークで、西淀川区の「今」を体感しました。続いて、昔の街の様子を知るために、当資料館の写真資料を用いたフォトランゲージ「西淀川公害」を行いました。
事前学習をしっかりしてきてくれたこともあり、各グループとも写真を丁寧に観察しながら、昭和40年代前後の写真の背景にある公害地域の状況について、活発に意見が交わされました。

各写真に関する解説
●西淀川公害に関する講義
続いて、西淀川公害に関して、公害問題の発生から、公害裁判の和解、さらに公害地域再生までの歩みについて、講義を行いました。

西淀川公害に関する講義
●公害患者の語り
語り部の山下明さんが、公害患者として西淀川区に引っ越して、公害病を患い、苦しんだ経験を語ってくれました。
公害を直接経験したことのない今の大学生は、山下さんが経験された苦難に心を痛めた様であり、当時の状況について多くの質問を寄せました。
特に、「当時、公害認定患者は多かったんですか?」、「認定患者さんは補償金だけで生活することができたのですか?」など公害患者の生活に関する質問が多数聞かれました。
その後、焦先生から、「公害を経験したことのない学生たちに、どのようなメッセージを伝えたいですか?」と問われると、山下さんは、「公害被害者が切り捨てられることのない社会であってほしい。そのためにも、公害の歴史や被害について知ってほしい」と語りました。

公害患者山下明さんの語り
●振り返り
最後に、本日の研修に対して、「印象に残ったこと」と「今後に生かしたいこと」を振り返りました。
「想像以上に(公害)被害が深刻だった」、「今も公害と戦っている人はいる」、「日本が経済発展の背景がおそろしい」といった感想が聞かれました。
また、「公害のことを忘れない」、「公害の被害を繰り返さない」、「次の世代に伝えていきたい」といった声もあり、それぞれが学びを今後に生かそうとしている様子がうかがえました。

振り返り発表
最後に、谷内が山下さんがかつて語った言葉を紹介して研修を締めくくりました。
――「人間をつぶさない、やわらかい成長をしてほしい。」
本日の研修を通して、公害を経験したことのない若者たちが、公害問題をはじめとする社会問題に対する理解を深め、また今後より良い社会が作られることに、ささやかに資することとなれば、幸いです。
(記・あおぞら財団アルバイト 王子常)