大阪医科薬科大学 公衆衛生学実習(6/11-12)

2024年6月11日(火)、6月12日(水)の2日間にわたり、大阪医科薬科大学の講義「公衆衛生学実習」の実習があおぞら財団にて行われました。参加されたのは、同大医学部の4年生13名と引率の先生1名です。

 

【1日目】

 

1日目は、タンデム自転車でのフィールドワークの他、公害患者さん、被告企業の元訴訟担当者のお話です。

 

タンデム自転車でのフィールドワークでは、地下水のくみ上げのため地盤沈下して海抜0メートル地帯となっていたり、工場と住宅地が隣接していたり、環境ロードプライシングや国道43号の道路沿道の環境対策について現場で確認しました。

 

大野川緑陰道路からタンデム自転車で出発

 

あおぞら苑前の石碑「公害と闘い環境再生の夢を」

 

午後からは西淀川公害について概要をお話した後、公害患者の岡崎さんのお話を聞いてもらいました。就職・結婚のため空気のよい高知県から西淀川に移って来られ、重度の気管支ぜん息を発症します。ご自身だけでなく1歳の息子も気管支ぜん息を発症し、未来を悲観し、親子心中を考えるほどでした。岡崎さんは重積発作により救急搬送され、仮死状態に陥ったこともあります。今も症状に苦しんでいますが、西淀川公害を伝える語り部として活動しています。

 

西淀川公害患者と家族の会の岡崎さんと上田さんのお話

 

続いて、西淀川公害訴訟の被告企業である神戸製鋼の元訴訟担当者の山岸さんからお話を聞いてもらいました。山岸さんからは神戸製鋼の法務担当として西淀川公害に関わりました。本件訴訟をふりかえって、時代の屈折点であり、トラブル処理の基本となる法律が時代の変化に対応していなかったということ、西淀川公害の和解は難しい事態の解決に和解という一定のスタイルを作り出したこと、単なる賠償金獲得ではなく青空を取り戻し時代に手渡すというスローガンを作ったことが和解に導いたということを語ってくれました。

 

【2日目】

 

2日目は、1日を通して7つのプログラムが行われました。

 

まず初めに、西淀川公害訴訟の弁護団の一員であった村松昭夫氏より、 弁護士の立場から見た西淀川公害訴訟についての講義が行われました。

西淀川公害訴訟の成果と意義や、公害被害者たちの思いや訴えについて、弁護士として共に闘って来られた実体験をお話ししていただきました。西淀川公害訴訟の和解解決は健康被害の補償だけでなく、地域再生(あおぞら財団の設立)という新しい解決の方向性が示された点についても詳しく解説していただきました。

 

弁護士としての経験をお話ししていただきました

 

講義の後は、「フォトランゲージ・西淀川大気汚染公害」と「ロールプレイ・あなたのまちで公害が起きたら」の2つのワークショップに挑戦しました。

フォトランゲージを通して公害発生当時の状況を学んだあと、様々な立場になりきってロールプレイを行い、公害発生時の解決策を探りました。

 

写真から読み取れる状況を考察します

 

どの立場の人も納得する解決策をつくることの難しさを体験しました

 

次は、西淀川・公害と環境資料館(エコミューズ)を見学しました。

裁判で証拠として使われた資料や、公害病と闘ってこられた患者さんの手記、当時の小学生が書いた公害に関する文集など、様々な資料から当時の状況に思いを馳せました。

 

裁判で使われた資料などを見学しました

 

お昼休憩の後、西淀川で多くのぜん息患者を診てきた医師の大島民旗氏より、医師から見た西淀川公害についての講義が行われました。

医学的視点からのぜん息の解説や、若くして亡くなられた公害患者さんを何人も診てきた体験などをお話ししていただき、医師を目指して学んでいる学生さんたちに熱いメッセージを送っていただきました。

 

お仕事の合間を縫ってオンラインで講義をしてくださりました

 

講義の後、ワークショップ「気候変動と公害」を行いました。

初めに公害運動と環境基準についての解説が行われ、現在の環境基準は公害運動によって市民が獲得してきたものであることを学びました。未来の持続可能な環境を考えるため、気候変動対策に必要なことをグループで議論し、特に必要だと思う対策ベスト3を決めて発表しました。

 

交通に関連する対策が多くあげられました

 

 

 

最後に、2日間の学びを振り返るワークショップが行われました。

2日間を通して学んだこと、印象に残ったこと、これから取り組みたいことなどを付箋に書き出し、グループで意見を共有しました。近い意見をグルーピングし、2日間の学びのまとめを発表してもらいました。

 

書き出して共有すると、学びが頭の中で整理されます

 

この日のたくさんのプログラムの中で特に印象的だったのは、医師の大島民旗氏から医師を目指す学生さんたちに向けたメッセージの中にあった「医師は医学の知識だけでなく、社会にも目を向ける必要がある」という言葉でした。西淀川大気汚染公害の経験から学んだように、環境汚染や気候変動などに注目することも、公衆衛生に通ずるものがあると感じました。

この2日間のフィールドワークでは、実際にまちを見て回り、公害被害の当事者から実体験を聞き、これらの学びをチームで共有することができました。このフィールドワークをきっかけに、訪れる、尋ねる、話し合うなど、自身の経験を通じた学びを深めていっていただければと嬉しいです。

 

 

 

(谷内、あおぞら財団アルバイト・小松)

 

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関連教材・動画(外部のサイトに移動します)

〇【テキスト】学生が聞く西淀川大気汚染公害:岡崎久女さん

https://aozorazaidan.stores.jp/items/64d9ad13a30c0900352f14df

〇【動画】【学生が聞く 西淀川大気汚染公害】岡崎久女さんインタビュー「青空は当たり前ではないことを伝えたい」

https://www.youtube.com/watch?v=EvMEVKtfdw0

〇【テキスト】「企業の側からみた西淀川公害」山岸 公夫さん(元神戸製鋼)

https://aozorazaidan.stores.jp/items/64d9db389b4c19002be14da5

〇【動画】元神戸製鋼山岸 公夫さんインタビュー

https://www.youtube.com/watch?v=bqy7RBZjGYQ

 

〇【テキスト】「弁護士として大気汚染公害に関わって(道路和解を中心に)」村松昭夫さん(弁護士)

https://aozorazaidan.stores.jp/items/64d9dcaf3cc5520032ab670b

〇【テキスト】「医師として大気汚染公害に関わって」金谷 邦夫さん(医師)

https://aozorazaidan.stores.jp/items/64d9dd163cc552002fab6a64

〇【教材】フォトランゲージ「西淀川公害」

http://aozora.or.jp/kougai_lecture/tool/photolanguage/

〇【教材】ロールプレイ「あなたのまちで公害が起きたら」

http://aozora.or.jp/kougai_lecture/tool/kougai_roleplay/

※【教材】「気候変動と公害」(「気候変動×防災×公害ハンドブック」より)http://aozora.or.jp/kougai_lecture/tool/climatechagehandbook/

 

あおぞら財団では、フィールドワークや公害患者さんの語り部などを取り入れたオーダーメイドの授業、研修を行っています。SDGs達成に向け、パートナーシップで問題解決に取り組んだ大気汚染公害の経験を、現地で学んでみませんか?

あおぞら財団の授業、研修に興味のある方はこちら↓をご覧ください。

http://aozora.or.jp/kougai_lecture/edu/

研修・教育(「あおぞら財団の研修・教育」のページに移動します)