みつばちの森プロジェクト、標準養蜂箱の設計開始

昨年末、キリマンジャロ山で「ミツバチの森づくり」と「村人たちの生活向上」を目的として開始した“世界遺産キリマンジャロ『みつばちの森』プロジェクト”。しかし世界を揺るがせている新型コロナウィルス(COVID-19)の影響を大きく受けています。

 

タンザニアはウィルスの国内での広がりについて5月にデータの公表を打ち切ってしまい、現在世界で唯一のデータ非開示国となっています。このため村人たちの安全を考え、現場での活動を制限せざるを得なくなっています。

 

ここではそうした中でこれまでに進めてきた取り組みの状況についてご報告します。

 

『みつばちの森』プロジェクトはキリマンジャロ東山麓にあるロレ村で取り組んでいます。プロジェクトで課題となっていることの一つに、標準養蜂箱の整備があります。現在プロジェクトで使用しているのはトップバー・ビーハイブ(TBH、下写真参照)と呼ばれる養蜂箱ですが、統一された規格が存在しません。このため様々な形状や構造のTBH養蜂箱が現場で混在する状況となっています。形状、構造が異なれば、当然管理の仕方が変わってきます。さらに相互に互換性がなく、消耗品の融通が利かないことが大きな問題となっています。

 

写真:“トップ・バー”と呼ばれる棒状のパーツの下に巣を作らせるのが、THBタイプ養蜂箱の特徴

 

こうしたことは、今後のキリマンジャロ山での養蜂の普及を考えたときに大きな障害となってきます。またほかにも現状のTBH養蜂箱には改善すべき点が多々あります。

 

そこで当会は、今後普及にあたって標準としていくTBH養蜂箱を一から設計していくことにしました。標準養蜂箱を持てることは、標準となる養蜂スタイルを確立できることでもあります。同時に、精度ある養蜂箱を現場で調達していくための技術定着も図っていくことにしています。

 

当初は今年中にこの標準養蜂箱の試作品を完成させ、現場で試しながらさらに改良を加えていくことにしていました。しかし試作養蜂箱の第1号を完成させたところでコロナ禍のためそれ以上の作業を中断せざるを得なくなってしまいました。また第1号は村の大工に作ってもらったのですが、まだ設計図通りにはなっておらず、現場で試すことができません。まずは大工さんの技術習熟を図っていく必要があります。

 

標準養蜂箱のパーツ図面

写真: 標準養蜂箱のパーツ図面

 

このほかにもプロジェクトでは、ミツバチがトップバーに正しく巣を作るよう誘導するためのプラスチック巣礎の試行や、蜜源樹ビービーツリー(Evodia Daniellii Hemsley、マツカゼソウ科)の育苗、群れをキャッチするためのキャッチボックスの設置など、新しい試みに次々とチャレンジしてきています。残念ながら今のところプラスチック巣礎はミツバチたちのお気に召さないらしく、そっぽを向かれています。ビービーツリーはようやく発芽してくれたものの、発芽率は2割程度とかなり低いことが分かってきました。また発芽した苗木も大変虫害に遭いやすく、かなり葉っぱが食害を受けています。

 

写真: 巣箱に設置されたプラスチック巣礎(上に写っている黒い部品)

 

写真: ビービーツリーの苗木

 

現在ここまで実施してきていますが、コロナウィルスとそれに対するタンザニア政府の対応を見極めるために、それ以上進めることを一旦見送り、まずは村人たちの安全確保を優先することにしています。コロナ禍もすぐには収束しそうもなく、年内はこのまま厳しい状況が続くものと覚悟しています。