「みんなで元気に」東日本大震災被災地支援を再開

新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛の影響で、様々な社会活動が中止を余儀なくされてきましたが、緊急事態宣言の解除を受けて、AAR Japan[難民を助ける会]は東日本大震災(2011年3月)の被災地で続けている支援事業「地域みんなで元気になろうプロジェクト」の活動を、コロナ感染予防に配慮しながら再開しました。再開の判断にあたっては、現地の方々の要望にも配慮しました。AAR東北担当の大原真一郎が報告します。

 

【4か月ぶりに仲間と再会】

4ヵ月ぶりに手芸教室を楽しむ参加者(福島県南相馬市、2020年6月4日)

 

「みんなに会うのが楽しみだった!」「誰かと本格的に話すのは本当に久しぶりだよ」。
福島県南相馬市かしま交流センターに6月4日、いつもの笑顔が戻りました。集まったのは、昨年3月まで同市内にあった仮設住宅を出て、現在は南相馬市で暮らす女性5人です。この日は手芸活動として、紙製の買い物籠づくり(ペーパークラフト)に取り組んだほか、自家製の漬物やカレーライスを囲んで約4ヵ月ぶりのおしゃべりに花を咲かせました。

 

AARは2011年7月、仮設住宅の避難者支援を目的として「地域みんなで元気になろうプロジェクト」を開始し、その後も避難生活を送る方々、自宅に戻られた方々の健康維持とともに、孤立を防ぐためのコミュニティ活動として、無料マッサージ、茶話会・食事会、手芸教室などを継続しています。2019年度は岩手・福島両県でなどを合計80回開催し、のべ3,376人が参加しましたが、コロナ感染拡大を受けて、2020年3月以降は活動を見合わせてきました。
 
手作りの買い物籠(福島県南相馬市、2020年6月4日)

 

家庭菜園で採れた野菜を添えたカレーライス(福島県南相馬市、2020年6月4日)

 

しかし、全国に出されていた緊急事態宣言が5月14日に東北地方など39県、25日には首都圏を含めて全面的に解除されたことを受けて、AARでは手指の消毒、室内の換気など感染予防策を十分講じたうえで、少人数での活動を再開する準備を進めました。活動に参加されていた方々から寄せられた「仲間に会えなくて寂しい。早く集まりたい」とのご意見も再開を後押ししました。かしま交流センターでは2月初旬の開催が最後だったため、実に4ヵ月間ぶりの再会となりました。

この日参加した女性たちは、「近くの町でも感染があったし怖いよね。この4ヵ月間、食料品などの買物以外はずっと家にいて、家庭菜園をやってた」「買い物客が少ない時間帯を予測してスーパーに行くと、みんな同じことを考えるので混んでるのよ。お父さん(ご主人)は持病があるから特に注意してた。4ヵ月ぶりでみんなに会えるから楽しみだったわよー、面と向かって悪口も言い合える友だちにね」などと話が弾みました。他方で「東京に遊びに行って感染したらしい人がいて、ずいぶんひどいことを周囲から言われたみたい」という悲しい現実も会話の中からうかがえましたが、参加した方々は気心の知れた仲間との再会で互いに元気をもらったようでした

 

【コロナと付き合っていくしかない】

活動中断の間も当会(大原)は参加メンバーのリーダー役の方と電話やSNSで連絡を取り合い、南相馬市の状況をフォローしてきましたが、みなさん再会を楽しみにしてくださった半面、コロナ感染の恐ろしさや地域住民同士の気遣いもあってか、この4ヵ月間に何があったかを語るのに一生懸命という印象を受けました。AARは2011年からこのプロジェクトを続けていますが、大震災から9年を経た今、支援する側・される側の関係ではなく、私自身を含めて共に集うという雰囲気を感じます。その一方、コロナ騒動の陰で原発事故が絡む地域の確執、汚染水・汚染土の問題、経済格差、在宅避難者の問題が未解決のまま山積しています。

集いの後で立ち寄った近所の男性は「コロナは怖いけど、インフルと同じように毎年流行するだろうね。うまく付き合いながら生活するしかないよ」と率直な思いを語ってくれました。東日本大震災と原発事故、昨年の台風19号被害、そしてコロナウイルス感染と度重なる困難を乗り越えようとする地域の方々に寄り添いながら、AARは今後も息の長い支援に取り組んでまいります。