【ブリッジフォースマイル初のインパクトレポートを公開】~親を頼れない すべての子どもが 笑顔で暮らせる社会へ~

 

認定NPO法人ブリッジフォースマイル(B4S)は、社会的インパクトの測定や親を頼れずに育った子ども・若者への支援の実践についての取り組みをまとめた「インパクトレポ―ト」を、この度、初めて公開します。B4Sの活動の3本柱である、「巣立ち支援」「伴走者の育成」「広報・啓発活動」の社会的インパクトを中心にお届けします。

 

 

 

◆認定NPO法人ブリッジフォースマイルインパクトレポート➡こちら https://www.b4s.jp/post-11678/

 

 

 

【初のインパクトレポート公開に寄せて】

認定NPO法人ブリッジフォースマイル 代表:林恵子

 

 

■社会的インパクトとの出会い、そして歩み

 

ようやく インパクトレポートが完成しました。本当に長い道のりでした。

「社会的インパクト」という考え方を初めて知ったのは、2004年に団体を設立して5年ほど経った頃でした。

自分たちの活動プロジェクトが社会に与える影響を定量的、定性的に把握しその価値を判断するこの事に対して、抵抗感がありました。

 

 

虐待や貧困等で、親を頼れない子ども・若者である当事者たちの支援をしている私たちとして、例えば「彼らの収入がどのくらい上がったか」「生活保護を脱したか」等の、経済的指標で測ることが中心となる点に違和感があり、「子どもたちの幸せをそんな物差しで測っていいのだろうか?」という感情的な反発も膨らみました。

また、経済的な効果を図るということが、現実的に可能かどうかもわかりませんでした。

私は拙著『できるかも。』(英治出版)の中でも、「成果なんて簡単に出ない」と書いており、ある種の開き直りすらあったのです。

 

しかしその後、寄付が思うように集まらないという課題に向き合わざるを得なくなり、社会的インパクトに本格的に取り組む決心をしました。3つの協力者たちが背中を押してくれました。

ひとつ目。あるコンサルタントの方々のプロボノ協力を得て調査したところ、「B4Sの認知度は決して低くないものの、論理的な説得力に欠けている」との指摘を受けることとなりました。

ふたつ目は、2019年からJANPIA助成金をいただき、パブリックリソース財団の伴走支援の下、ブランディングやウェブサイトのリニューアルを始め、広報活動の全面見直しを行ったことです。

そして三つ目に、2020年PwCコンサルティング合同会社の社員によるプロボノ活動でした。取り組みの中で驚いたのは、社会的インパクトを測る指標は経済だけではなく、「世界幸福度指数」「SDGsの視点」や厚生労働省が出している人々のウェルビーイング(幸福感や豊かさ)を支える社会的つながりの度合いを数値化・可視化した指標「つながり指数」など、人間の幸福やつながりを示す様々な指標があるということを知りました。

 

「社会的インパクトって、それでもいいんだ!」——目から鱗が落ちた瞬間でした。

 

 

■社会的インパクトの前に、ロジックモデル

PwCの皆様に伴走していただいたことで、取り組みに対する抵抗感を乗り越え、前向きに学びながら進みはじめたのです。

最初に、行動計画とそれによって期待される結果を可視化する「ロジックモデル」の作成に取り掛かりました。私たちは、何を目指しているのだろうか。子どもたちの自立は、どうあるべきなんだろうか。言語化していく作業の中で、スタッフの認識が一致していないことが明らかになってきました。

B4Sには、多くの支援メニューとプロジェクトがあります。プロジェクトごとに、大切にしたい項目に違いがあることも見えてきました。

また、言葉ひとつとっても、「自己肯定感・自己効力感・自己有用感・自尊感情・自尊心」というような、似たような言葉が錯綜している、なんてことにも改めて気づきました。

こうして1つずつ、プロジェクトを横断的に整理して、最終的にB4S全体として目指すものは、こういうものだよね!というものを少しずつ修正しながら作り上げていきました。

 

次は、ロジックモデルで示した社会的インパクトを測るため、活動前後の変化を見るアンケートの作成に着手しました。

すると今度は、「子どもたちを数字で評価するようで嫌だ」という声が、団体内部から上がりました。

過去の私と同じ、感情的な抵抗感です。何度も検討の場を設け、何度も質問項目を見直し、ようやく今の形に落ち着きました。

 

 

■ソーシャルインパクト・マネジメント

社会的インパクトを活動に活用することを、「ソーシャルインパクト・マネジメント」と言ったりしますが、その意味は2つあります。

1つは「私たちの活動が社会的に意味があるということを対外的に示すこと」。もう1つは「自分たちの活動がうまくいってるかどうかを内部で検証し改善に活かすこと」です。

社会的インパクトの導入の検討開始から5年ほどが経ちました。今ではロジックモデルについてもアンケートでの測定について、団体内でもだいぶ認識共有ができてきたなと感じています。

全社的な事業レビューを行ったり、ボランティアの方と一緒にアンケート結果を活用して活動の振り返りをしたりなど、さらなる積極的な活用を始めるチームも出てきました。

同じ言語で話し、団体内部の意識を一つにしていくということに、社会的インパクトはとても役に立ちました。

そしてこの度、B4Sとしてはじめて、社会のみなさまに向けて「インパクトレポート」を発表することができます。最初に書いた通り、長い道のりでした。

 

 

■たくさんの人たちの力と想いがカタチに

インパクトレポートは、先に書いたプロボノのみなさん、そして違和感を持ちながらも取り組んで自分たちのものとしていった団体スタッフ、ロジックモデルの勉強会に積極的に参加してくれたサポーター(社会人ボランティア)のみなさん、そんな大勢の方の時間と想いが詰まっています。

PwC社員の皆様ご支援終了後、いま、B4S内のソーシャルインパクトマネジメントの運用を一手に担ってくれているAndyには、心から感謝です。彼のストレングス「最上志向」と「学習欲」が、B4Sの取り組みを支えてくれています。

また、初のレポートということもあり、試行錯誤する私たちの修正依頼に根気強く付き合ってくださり、このように素敵なデザインでまとめてくださった内田さんにも、御礼申し上げます。

多くの人たちの温かい協力の結晶がこのインパクトレポートです。

B4Sの数ある活動の中で、今回、取り上げたのは5つの活動だけですが、今後、少しずつ増やして行きたいと思います。ぜひ、ご期待ください。

 

認定NPO法人 ブリッジフォースマイル

代表 林恵子

 

 

津田塾大学卒業後、人材派遣会社に就職。2児の出産後、育児中にキャリアに悩み参加したビジネス研修で、児童養護施設を調査する機会を得る。2004年NPO創立。著書『できるかも。――働く母の“笑顔がつながる”社会起業ストーリー』(英治出版)